【Case4 シングル】
毎月ギリギリ、年に2度だけ貯金するボーナス依存型家計

■冬木家のプロフィール
●家族構成
睦美さん(43歳、外資系企業勤務)
●年収
900万円(手取り700万円)
●住居
分譲マンション(7年前に購入)
●住宅ローン
借入額4500万円 期間35年 変動金利0.5%
●保険
終身医療保険、がん保険
■睦美さんの状況
●シングル生活が楽しく結婚の予定はない
●外資系勤務でボーナスの比率が高い給与体系。退職金はない
●毎月の収支が赤字にならないよう工夫している
●コロナ禍の前は年2~3回、海外旅行に出かけていた。今は国内旅行で我慢、解禁されたら早く海外に行きたい
「家さえあればなんとかなる」と考えるのは危ない

シングルを続ける人の家計で気をつけたいのは、引き締めモードに転換するきっかけが乏しいことです。

結婚すれば、家計を見直すチャンスになります。子どもが生まれれば、教育費を捻出するため、引き締めモードに入らざるをえません。引き締め方が身についていれば、老後に収入が減っても対応できます。でもシングルの人が家計引き締めを経験しないまま老後に突入すれば、貯蓄はどんどん減っていくでしょう。

そんな危険をはらんでいるのが、睦美さんの家計です。住宅購入は引き締めモードに入るチャンスでしたが、購入後は「家さえあれば安心、なんとかなる」と考えて、浪費している傾向もありそうです。

それは、睦美さんの家計収支を見ればわかります。毎月38万円の収入から積み立てはiDeCoの2万円だけ。貯蓄はボーナス頼りで、今は年に145万円の貯蓄ができていますが、これはコロナ禍で海外旅行に行けなくなったため。以前は旅行に年100万円も使っていました。

ボーナスは勤務先の経営状況が悪化すれば、とたんに大きく減る可能性があります。これまでは順調だったとしても、貯蓄をボーナスだけに頼るのは危険です。

さらに、睦美さんの勤務先は外資系です。いきなり撤退するなど、いつ仕事を失うかわからない点にも注意が必要。本当は睦美さん自身も内心、不安を抱えているはずです。

経済的な不安に対処するには、しっかりと資産を築くことが重要です。早急に家計改善を始めましょう。

まずは、毎月の収支です。被服費と化粧品・美容院などに計8万円は使いすぎで、せめて半減したいところ。交際費や雑費も内容を見直して削減を図れば、毎月6万~7万円を浮かせるのは難しくないはずです。

ボーナスからの支出も見直しが必要です。コロナ禍が一段落しても、旅行支出は現状程度に抑えるべき。ボーナスがある間はできるだけ貯蓄を増やすと心に決めて、ほかの支出も削減を検討しましょう。

現在の貯蓄を見ると、900万円がすべて普通預金です。この一部に投資を取り入れるのがオススメです。40代からの運用なら、バランス型の投資信託などを使って国際分散投資を目指し、リスクを抑えるといいでしょう。投資する金額は、「損しても我慢できる金額の2倍」を限度とします。減ってもなんとか我慢できる額が100万円なら、投資額は200万円が上限です。

外資系で活躍し、高額の年収を得る能力のある睦美さんなら、意識さえ変えれば、確実に資産を築くことができるでしょう。

冬木家の収支

構成=有山典子

藤川 太(ふじかわ・ふとし)
ファイナンシャルプランナー

生活デザイン代表取締役社長。自動車会社で燃料電池自動車の研究に携わった後、FPに転身。家計の個人相談の普及を目指して2001年に設立した「家計の見直し相談センター」では、すでに3万世帯を超える家計診断を行っている。家計管理、生命保険、資産運用など幅広い分野に精通。『やっぱりサラリーマンは2度破産する』など著書多数。 生活デザイン株式会社 オフィシャルサイト