考えて欲しいことがある。それは、お金をどう使うか

本業にコツコツ打ち込んでいる会社は、ドカンと儲かったり、爆発的に株価が上がったりはしない。でも、預金より2%、3%程度高い利回りで回っていけば、それで十分。

年間10%、20%上がるものもあるが、それらは、同じだけ下がることもある。長期の投資成果は、地味に運用していたものとほとんど変わらない。大きく下がってハラハラし、怖くなって売ってしまえば損を確定させることになる。それより、上げも小さいが下げも小さい運用をして、長期的にはまずまずのリターンが出ている、という方が、続けやすい。

そして、もう1つ、聡明な女性たちに考えて欲しいことがある。それは、お金をどう使うか、である。

我々は成熟した経済を生きている。モノが充足すると消費が伸びず、経済は成長しにくい。そんな中、欧米では経済的に余裕がある人を中心に、お金を使わなければいけない、という意識が芽生えた。NPOに寄付をする動きも広がり、米国では雇用の数%をNPOが生み出している。社会的課題解決のために出せる人がお金を出し、それが雇用を生み出し、経済が回る、というわけだ。

日本には984兆円の預貯金がある。その1%が消費や寄付に回れば1.8%、3%が使われれば5.2%、経済成長を押し上げる。あなたの使ったお金で誰かが潤い、誰かが学び、文化が育つ。あなたの心も豊かになり、給料も上がるだろう。

モノを超えて、文化に触れる、旅をする、趣味を持つなど、心の満足につながるコト消費にお金を使い、経済を回す。そのリターンを受け取る。余裕がある人、稼ぐ力がある人、考えられる人、そういう人からはじめればいい。日本でも、お金を使う文化を醸成し、国や企業に頼らず、自分たちで経済を回していこう。

お金を守るための3カ条
1. 生活に不可欠な企業に投資する
2. 勤務先は人々に必要とされるか否かを考える
3. お金を抱えず、使うか寄付する

構成=高橋晴美 撮影=国府田利光

澤上 篤人(さわかみ・あつと)
さわかみホールディングス代表取締役

さわかみ投信創業者。1971年から外資系運用会社などでの勤務を経て、99年に長期保有型の「さわかみファンド」を設定。日本における長期投資のパイオニア。2つの公益財団法人も創設。