商品の供給は新型コロナウイルス感染症などに影響される一方、需要はテクノロジーの変化や中央銀行の大幅な緩和によって大きく変わりました。利上げをすれば一時的には需要が抑えられるかもしれませんが、農作物や銅、鉛の生産量は増やすことはできず、工場で大量生産することもできない。物流のゆがみも物不足を生み、インフレを助長します。エネルギー価格の高騰は世界的な流通コストの上昇をもたらしています。
世界を見渡せば株や債券だけでなく、不動産もバブルになっているようです。しかし、商品だけはまだ割安だと感じます。例えば、銀は高値圏から約50%も下がっているので割安、砂糖も同様です。少し上昇したといっても、ピーク時の価格を大きく下回っているので、バブルにはほど遠い。私は長期保有できるものに投資したいので、今はテクノロジー株よりは商品を注視しています。
皆さんも資産ポートフォリオを考え直すべきです。過去においては、インフレ時には金や銀、食料やエネルギーなどの商品、あるいは不動産を持つことが有効でした。今、ウクライナ侵攻が起こって以降、食料やエネルギーの高騰が続いています。
10年足らずで、45倍にもなった投資対象とは
私はずっと商品には注目し投資をしてきました。長期的に見れば、商品ほどもうかっている資産は少ないのです。これまでいたるところで何度もお話ししていますが、私は1966年から74年にかけて砂糖の先物が1.4セントから66セントに上昇する間、安く買った砂糖を持ち続け、価格が45倍以上にもなったときは、とても興奮しました。
株式と商品の価格変動には逆の相関があって、およそ18年程度のサイクルで両者が入れ替わります。06年から23年にかけては、商品が上昇し株式は行き詰まっていましたが、その後は逆でした。一方、70年代には商品相場が過熱し、株式が不振でした。この間、米国は史上最悪のインフレ期で、株式とは対象的に商品市場は上昇を続けました。砂糖以外にも、トウモロコシは295%も上昇し、石油も70年代に15倍に上昇、金や銀は10年間で20倍以上も上がっています。
今、しばらく続いた「株式の時代」が終わり、再び「商品の時代」が到来しようとしているのです。
しばらくインフレが続くと見ているので、ポートフォリオにはある程度、商品を組み込んでおくことをお勧めします。商品投資は、株式の下落相場やひどいインフレに対してだけではなく、深刻な不況に対しても有力なヘッジ手段となりうるものだからです。この先来ると思われる過去最大級のバブルの破裂により、私が懸念する究極のベア(弱気)相場に突入したときにも、きっと皆さんの資産を守ってくれるはずです。