大量のメールの処理に時間がかかり、肝心の仕事がままならない状況になってしまった時にはどうすればよいか。働き甲斐を発見し、成功へと近づく方法を、多くの人に示してきたライス大学経営学教授であるスコット氏は「メールと仕事とを混同してはいけません。メールは仕事をするためのツールの一つですが、仕事そのものではありません」という――。

※本稿は、近藤麻理恵、スコット・ソネンシェイン『Joy at Work 片づけでときめく働き方を手に入れる』(河出書房新社)の一部を再編集したものです。

メールに割く時間が多いほど仕事の生産性が低下する

改めて言うまでもないでしょうが、メールについては、受信も送信も数が多すぎます。

それなのに、これがどれほど重大な問題なのかは認識されていないようです。一般的なオフィスワーカーは、1日の就業時間の半分ほどをメール関連の作業にあてており、研究によれば、メールが仕事の妨げになると考えている人が、全体の半数以上にものぼるそうです。

サーシャの例はまさにその典型でした。小規模なビジネスを営む人にはよくある話ですが、ブランディングコンサルタントの彼女も、顧客の要望にはつねに迅速に応えなければならないと思っていました。頻繁なメールチェックのせいで、睡眠時間さえ削り、肝心の仕事がままならない状況でした。「メールを読んで、整理するのにすごく時間を取られて、これではとうていやっていけません」と彼女は私に訴えました。

ある研究によれば、メールに割く時間が多いほど、生産性が低下し、ストレス度は上昇します。それこそが自分の現状だと、サーシャは気づきました。そこで、顧客からのメールに対応する時間を設定した上で、それ以外の時間はメールを使わないと決めたのです。

そして、メールでの「営業時間」を顧客らに知らせました。最初のうちは、サービスが悪くなったと彼らが腹を立てるのではないかと心配でした。ところが実際には、すべてがすっかり改善されたのです。サーシャは貴重な時間を使って仕事に集中し、顧客たちが彼女からもらうメールは、以前よりも数は少なくなりましたが、中身はずっと濃くなったのです。

メールに対応する「営業時間」を決める

メールを頻繁にチェックしたくなる気持ちはわかります。私もその一人ですから。なにか重要な情報を見逃してしまうのではないかと心配になりますし、仕事に責任を持つためにはつねに対応可能でなければ、と思ってしまいます。もし、頻繁にメールをチェックして返信したくなるようなら、あなたもメールの「営業時間」を決めて、邪魔が入らずに仕事ができる体制を整えてはいかがでしょうか。たとえ1日に30分だけでも、メールから離れればいいのです。

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