※本稿は、近藤麻理恵、スコット・ソネンシェイン『Joy at Work 片づけでときめく働き方を手に入れる』(河出書房新社)の一部を再編集したものです。
メールに割く時間が多いほど仕事の生産性が低下する
改めて言うまでもないでしょうが、メールについては、受信も送信も数が多すぎます。
それなのに、これがどれほど重大な問題なのかは認識されていないようです。一般的なオフィスワーカーは、1日の就業時間の半分ほどをメール関連の作業にあてており、研究によれば、メールが仕事の妨げになると考えている人が、全体の半数以上にものぼるそうです。
サーシャの例はまさにその典型でした。小規模なビジネスを営む人にはよくある話ですが、ブランディングコンサルタントの彼女も、顧客の要望にはつねに迅速に応えなければならないと思っていました。頻繁なメールチェックのせいで、睡眠時間さえ削り、肝心の仕事がままならない状況でした。「メールを読んで、整理するのにすごく時間を取られて、これではとうていやっていけません」と彼女は私に訴えました。
ある研究によれば、メールに割く時間が多いほど、生産性が低下し、ストレス度は上昇します。それこそが自分の現状だと、サーシャは気づきました。そこで、顧客からのメールに対応する時間を設定した上で、それ以外の時間はメールを使わないと決めたのです。
そして、メールでの「営業時間」を顧客らに知らせました。最初のうちは、サービスが悪くなったと彼らが腹を立てるのではないかと心配でした。ところが実際には、すべてがすっかり改善されたのです。サーシャは貴重な時間を使って仕事に集中し、顧客たちが彼女からもらうメールは、以前よりも数は少なくなりましたが、中身はずっと濃くなったのです。
メールに対応する「営業時間」を決める
メールを頻繁にチェックしたくなる気持ちはわかります。私もその一人ですから。なにか重要な情報を見逃してしまうのではないかと心配になりますし、仕事に責任を持つためにはつねに対応可能でなければ、と思ってしまいます。もし、頻繁にメールをチェックして返信したくなるようなら、あなたもメールの「営業時間」を決めて、邪魔が入らずに仕事ができる体制を整えてはいかがでしょうか。たとえ1日に30分だけでも、メールから離れればいいのです。
メール対応タイプ①:こまめに受信トレイをからにする対応型
研究によれば、メールへの対応は次の3タイプに分かれます。そのいずれもが、問題を生じさせる可能性があります。
こまめに対応型は、受信メールにつねに注意を払い、メッセージを受け取ったら、すぐに対応します。していた作業を中断して、メッセージを読み、すぐに各フォルダへファイル、という流れです。これには問題があります。メールを1件処理するには、作業中の仕事を26分間も中断しなくてはならないのです。
フォルダを複雑に分けている場合、こまめに対応型はさらなる窮地に陥ります。フォルダの管理や維持にかなりの時間を取られる上に、必要なメールを見つけるのにも手間がかかりますし、そもそもメールをファイルすること自体が重荷です。じつは、研究によれば、フォルダが20以上あると、複雑すぎて管理できません。フォルダが多すぎると、届いたメッセージをどのフォルダに保存するか決めるための時間がかかり、しばらくすれば、どこに保存したか忘れてしまうのです。
メール対応タイプ②:数カ月ごとに受信トレイをきれいにする大掃除型
この大掃除型は、メールがある程度たまって、目当てのものが見つけられなくなると、受信トレイの中身をほとんど削除して、しばらくはきれいな状態が続くけれど、そのうちにまた散らかってしまう、というサイクルをくり返します。これは、二つの点で最悪です。
散らかった状態で暮らすことと、重要なメッセージを見失うこと。たまりにたまった受信メールをからにしようとすると、急ぐあまりにあわててしまう、というのは私も身に覚えがあります。そのあげく、重要なメッセージまで削除してしまって落ち込むことになりかねません。
メール対応タイプ③:受信メールをためたままにしておく放置型
この放置型は、そもそもメールを管理する方法を知りませんし、そのための努力をする気もありません。メールソフトの検索能力に頼るのみです。検索機能はかなり優秀ですが、不要なメールを整理すれば、はるかに効率よく迅速に使えるのです。
メールの管理は本来、複雑ではありませんし、時間もたいして要しません。必要なメールを、いくつかのフォルダにきちんと分けておけばいいだけなのです。
まず、受信トレイから始めましょう。ここは整理を待つメールを一時的に置いておくための場所です。残しておきたいメールを保存する場所でも、受信メールを置きっぱなしにする場所でもありません。
フォルダは10個くらいがベスト
メールを残すかどうか判断するときは、自分に次の質問をしてください。
このメールの再読は、将来の仕事に役立つ知識や発想、意欲をもたらすか?
このメールに、ときめきを感じるか?
あなた自身、そしてあなたの仕事にとって、役立つアプローチを見つけましょう。デジタル文書については、適切な数のフォルダに管理しましょう。標準的には、サブフォルダも含めて10個くらいのフォルダがいいでしょう。検索しやすいように、内容が関連しているものは一つにまとめます。たとえば、「ブログ」「インスタグラム」「フェイスブック」などは、全部まとめて「ソーシャルメディア」と名づけたフォルダに入れます。
他にも、上司から送られた方針メールなどを入れる「記録保存」フォルダ。落ち込んだときなどに読む「ときめき」フォルダも役立ちます。ちなみに、私はこのフォルダに、学生からの「いい授業をありがとう」メールや、研究を褒めてくれる学者仲間からのメール、コンサルタント業務や講演に対する企業からの感謝メールなどを入れておきます。もし、重要な添付ファイルがあれば、別のフォルダにひとまとめにしましょう。
いらないと判断したらフォルダごと削除が正解
受信トレイ内のメールを片づけたら、次は既存のフォルダの整理です。最初に、残しておく価値のあるフォルダを選びます。メールをいちいち読み返して、残すかどうかを決めるのでは時間がかかりすぎます。いらないと判断したら、フォルダごと削除してしまいましょう。
たとえば、私はすでに終わった授業関連のフォルダは不要とします。ただし、企業内などのデータ保持条件があれば、それに従います。また、送信済みアイテムに関しても、同様に処理します。こうしておけば検索が容易になるし、メッセージを一つひとつたしかめるのは時間の無駄です。
メールの片づけは毎日すべし
メールの片づけは毎日しましょう。そして、受け取ったメールをすべて取っておくという考えから、一定の理由がない限りは削除するという考えに切り替えましょう。メールチェックは1日の初めと終わりの2回、というように決めておくのがいいでしょう。午前中に、なんらかの対応が必要だと思った場合、おおむね夕方までには解決法を思い付くはずです。メール対応の時間帯を決めておけば、仕事の中断を最小限に抑えられ、自分にとってもっとも重要な仕事に集中できます。あなたを頼りにしている人たちに、あなたがメールに対応する時間帯と、緊急の場合のみ使う別の連絡手段を知らせておけば、頻繁にメールをチェックする必要はなくなります。
私が提案している方法は、自分の場合には解決法にならないと、あなたは思われるかもしれません。
メールをファイルしたことがなくて、「これまでずっとメールは無視してきたし、片づけなんてうまくできないに決まっている」と思っているかもしれませんね。もしあなたが、もうお手上げだと思っているのなら、すごく簡単な解決法があります。すべてのメールを「アーカイブ」フォルダに移動させてしまいましょう。万一、必要が生じたら、そのとき検索すればいいのです。その上で、あらたにフォルダへの仕分けを始めて、フォルダの数は10個以内にします。
まずやるべきはニュースレターやメルマガの整理
散らかったメールの山に圧倒されて、受信トレイから保存場所へと散らかりを移動させるだけで、見て見ぬふりをしていませんか? メールをきれいに片づけて、デジタルライフをもっと楽しむための秘訣をお教えしましょう。
あなたのメール対処法がどのタイプでも、とにかくメールは少ないほうがいいというのが共通認識です。メールと仕事とを混同してはいけません。メールは仕事をするためのツールの一つですが、仕事そのものではありません。
まずは、ニュースレターやメルマガの整理です。あなたもきっと、そういったものに登録しているでしょう。
仕事の上で役立つかもしれないと思ってのことですね。では、ここで真実を見極めましょう。いったい、どれがあなたのワークスタイルに本当に役立ち、どれが混乱を生じさせているでしょうか? ニュースレターなどの登録は、基本的には全部解除する方針で整理して、ときめきを感じられるものだけを残しましょう。いったん整理したあとに、あらたに登録するときにも、同じ方針で取捨選択しましょう。
送信メールを減らせば受け取るメールも減らせる
次に、送信メールの数を減らします。メールなら簡単に送れるからといって、乱発するのは問題です。仕事に必要な場合にだけメールを送るようにすれば、あなたは模範を示すことができます。送るメールを少なくすれば、受け取るメールも減るはずです。
相談や情報提供など、仕事上どうしても必要な場合にのみ、メールを送りましょう。なんでもCCやBCCでコピーを送って共有することはやめましょう。送付先リストに加えるかどうか、同僚たちと話をして意向を聞いておきましょう。コピーを送るときには、一呼吸おいて、自分自身に問いかけましょう。こう尋ねるのです。本当にその人に情報を提供したいですか、あるいは、その人からの回答が必要ですか? 答えがイエスならば、正当な理由です。同じチームだからとか、自分が重要人物だと思われたいからというのでは、理由になりません。