人付き合い疲れから脱却するには

人付き合いって「面倒だな~」って感じること、ありますよね。でも、人脈が大事なのも確かですよね。経営学では人脈から得られるメリットを総称して、「ソーシャルキャピタル」(Social Capital/社会資本)と呼びます。人にとって金融資本、人的資本に続く、「第3の資本」ともいわれています。人脈は仕事にもキャリアにも重要です。その意味で、飲み会にはやはりそれなりに出ておいたほうがよさそうです。

さわぐちけいすけ、入山章栄『経営理論をガチであてはめてみたら自分のちょっとした努力って間違ってなかった』(日経BP)
さわぐちけいすけ、入山章栄『経営理論をガチであてはめてみたら自分のちょっとした努力って間違ってなかった』(日経BP)

ただし、経営学の視点から見た場合、人脈には大きく分けて2つのタイプがあります。タイプを見分け、飲み会での付き合い方を変えるのがポイントなんです。

まず1つは、「ボンディング型のソーシャルキャピタル」です。ボンディング型は、比較的少人数で、密度が高く閉じたネットワーク構造のことを指します。メンバー同士が緊密につながって、ある意味で相互監視の状態にあるので、「合理的な意味での信頼関係」を築いています。この手のネットワークでは、自分勝手な振る舞いはしにくいです。

例えばメンバー同士の内輪話を外に漏らすなどしたら、昔でいう「村八分」状態にされかねません。これってちょっとウザいですよね。でもこの牽制機能があるから、互いに「ここだけの話」ができるわけです。仕事やキャリアや人間関係を考える上でも、「ここだけの話」を得るのはやはり大事ですよね。ですので僕のオススメは、ボンディング型の人脈の集まりには「たまに参加すること」です。毎月参加はちょっとキツイかもしれませんよね。でも、3カ月に1回くらいなら顔を出せるのではないでしょうか。「ちゃんと来てるよ、仲間だよ」とみんなを安心させるわけです。

異業種交流会は30分で帰る

もう1つの人脈のタイプは、「ブリッジング型のソーシャルキャピタル」です。さまざまな人と、薄く、弱く、でも手広くつながる関係性です。異業種交流パーティーなんかが典型ですね。とにかく人はそもそも認知がとても狭い。ですから、常に自分の認知を超えるようなサーチ・知の探索がなくては、人は成長しません。ですから、こういう一見自分とは畑違いのような人たちと交流するのは、とても重要ではあるんです。

ただし、この手の人間関係は、お互いの関係が希薄なので、スカスカ感はハンパありません。よく知らない人と表面的な会話ばかりするので気疲れしてしまう人もいるでしょう。

そこでオススメの方法は、異業種交流会のようなブリッジング型の人脈に関わるときは、「なるべく顔を出すが30分で帰る」です。一通り名刺交換したら、さっさと帰っちゃいましょう。解散時まで付き合う必要はありません。あとは場合に応じて、メールやLINEなどでフォローすればいいわけです。

名刺交換
写真=iStock.com/Satoshi-K
※写真はイメージです

というわけで、「ネットワークは使い分けが重要」と心得れば、気疲れもきっと少しは克服できるのではないでしょうか。経営学では、人のキャリア形成に人脈がとても大事なことが、すでに多くの研究で示されています。ぜひ疲れないように、うまく人脈を活用してみてください。

入山 章栄(いりやま・あきえ)
早稲田大学大学院経営管理研究科教授

1972年、東京都生まれ。慶應義塾大学経済学部卒、同大学院修士課程修了。三菱総合研究所へ入所。2008年、米ピッツバーグ大学経営大学院でPh.D.取得。その後、米ニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクール助教授。19年より現職。専門は経営戦略論および国際経営論。著書に『世界の経営学者はいま何を考えているのか』(英治出版)、『ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学』(日経BP社)、『世界標準の経営理論』(ダイヤモンド社)他