人付き合いは苦手だが人脈を増やしたい。どうすればいいか。経営学者の入山章栄さんは「経営学の視点から見た場合、人脈には大きく分けて2つのタイプがあります。タイプを見分け、付き合い方を変えるのがポイントなんです」という――。

※本稿は、さわぐちけいすけ、入山章栄『経営理論をガチであてはめてみたら自分のちょっとした努力って間違ってなかった』(日経BP)の一部を再編集したものです。

心のモヤモヤを言語化できるか

自分が何をしたいのか、自分でも分からないので焦ってしまう……。みなさんも将来のキャリアについて焦ったり、悩んだりすることがあるかもしれません。

僕はこの「私は何をやりたいの? 病」の最大のポイントは「言語化」にあると思っています。人はそもそも豊かな感覚を持っています。本当は多くのみなさんに、何かやりたいことへの思い、なんとなく「いいな」と感じていることへの感覚が心の中にあるはずです。ただ、それが言語化されていないだけのことも多いんですよね。

そこで紹介したいのが、経営学でも重視される「形式知と暗黙知」です。これは、ハンガリー出身の学者、マイケル・ポランニーが提唱したもので、この視点を経営理論に昇華させたのが、一橋大学名誉教授の野中郁次郎先生の知識創造理論、別名「SECIモデル」です。この理論は世界的に有名なんです。

誰かと語り合う「知的コンバット」の効用

まず、「形式知」とは言語化、記号化された知のことです。他方の「暗黙知」とは言語、文章、記号などの表現が難しい、なんとなくの感情・感覚・モヤモヤを指します。心の奥底に眠る、でも言葉になっていない「自分のやりたいこと」なんかは、まさに暗黙知ですね。人が持っている暗黙知は、形式知よりはるかに豊かであるとされています。

つまり、「私は何をやりたいの? 病」を克服するには、自分のなかに眠っている「やりたい」「好き」「自分に向いていそう」などのなんとなくの感覚=暗黙知を言語化して、形式知に変える必要がある、ということです。

では、具体的にみなさんのなかの感覚をどうやって言語化すればいいのでしょう。野中先生は、暗黙知を形式知化するには、1人で悶々と考えるのではなく、誰かと向き合ってアツく議論する「知的コンバット」が重要とおっしゃっています。僕もその通りだと思うのですが、今のご時世ではアツい語りだけでなく、お酒でも飲みながら友人や上司と夜通し語り合う「ゆるゆる知的コンバット」でも効果があるかもしれない、とも考えています。

打ち合せ中のビジネスパーソン
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