入社4年目には、今でも忘れられない大きな失敗も経験した。3階建て住宅の1階に寸法が違う柱材を入れてしまったのだ。ピンチを救ってくれたのは、日頃お世話になっていた大工だった。
「2階の梁から上をジャッキで上げて1階の柱を入れ替えてもらいました。この助けがなかったら追加費用含め大変な損害になっていたと思います。納品前の確認はもちろんですが、人のつながりこそ大事なのだと痛感しました」
岐路では力まず自分に正直に。激務と私生活を両立
キャリアは順調だったが、29歳を境にライフイベントに関わる女性特有のハードルが次々と現れる。
「転勤の内示後に夫と知り合い、転勤を断ったこともありました。非常に悩みましたが、このときは私生活を優先しました」
その1年後、初めてマネジャーに就任。実力も実績も足りないうえ、部下には先輩が含まれるという心苦しい状況だった。
「リーマンショックの影響で住宅業界は厳しい時期でしたが、何とか新規顧客をつかみ、結果を出さなくてはと必死でした」
ところが、就任後1年で妊娠し産休に。復帰後は時短勤務でもあり、営業課員として子育てと両立しようと思っていたが、再びマネジャーに抜てき。初めての育児と管理職の仕事を両立する激動の日々を経て、数年後には2人目を妊娠した。
「妊娠8カ月のときトラブル現場で取引先の人に『車で休んでいたほうがいいよ』と気遣っていただき、やさしい言葉に涙があふれたことがありました。職場で泣くなんて……緊張の糸が切れた感覚でした」
営業課員時代は自分の仕事に集中すれば評価されたが、管理職となると部署としての達成目標があり、責任は重い。上司への報告や部下の相談対応、新人教育もあり、仕事の量は桁違いだった。
「2人の子育てと仕事で毎日が精いっぱいでした。先を見据えて仕事をする立場だったけれど、非常に難しかったですね。幸いにも上司が『会社全員で子育てしよう』と協力的な雰囲気をつくってくれて精神的に救われましたし、課のメンバーや関係各所、お客様にも助けられました」
目が回る忙しさの中、仕事に打ち込む園部さんの昇進は止まらない。
「さすがに部長職はお断りしました。でも先輩に『昇進の話はサラリーマン冥利に尽きる。やってみてできなかったら無理だと言えばいい』と諭され、それもそうだなと」