過去を振り返ることで今を考える

――昨年は明治、大正、昭和を生きた教育者・河井道を描いた柚木麻子さんの『らんたん』が出版され、最近では大正時代の女性解放運動家・伊藤野枝を主人公にした村上由佳さんの『風よ あらしよ』がドラマ化されるなど、昔の女性たちの生きざまをフィクションとして描いた作品が続けて注目されています。

モデルはいるとしても、「誤解されているけど、本当はこんな一面もあったのではないか」など、小説ならフィクションとしても読めるところに面白さがあるんじゃないでしょうか。私もそうですが、柚木さんも、昔のことを振り返ることで、改めて今を考えようという視点が生まれたのだと思うのです。「彼女たちは、どうだったのかな?」と一つひとつ調べて書いていく。それが何となく今やりたいことなのかなと思います。

構成=新田理恵

窪 美澄(くぼ・みすみ)
小説家

1965年、東京生まれ。2009年「ミクマリ」で女による女のためのR-18文学賞大賞を受賞。受賞作を収録した『ふがいない僕は空を見た』が、本の雑誌が選ぶ2010年度ベスト10第1位、2011年本屋大賞第2位に選ばれる。また同年、同書で山本周五郎賞を受賞。2012年、第二作『晴天の迷いクジラ』で山田風太郎賞を受賞。2019(令和元)年、『トリニティ』で織田作之助賞を受賞。2022年『夜に星を放つ』で第167回直木賞を受賞。