欲しい人がいるのか、いないのか?

ではなぜ、私が買った中堅ブランドはダメだったのか――。それはズバリ、「需要」の問題でした。

すなわち、ロレックスが値上がりするのは「欲しい人が圧倒的に多い」からであって、私が買った中堅ブランドが高く売れないのは「欲しい人はそれほど多くない、というか少ない、というかほとんどいない」からです。

そして、その需要のもとになるのは知名度・ブランド力だということに、後になってから気付くのでした。

冷静に考えれば、10万~20万程度の中途半端な価格帯のブランド腕時計を、少し安いからといって、中古で買うような人はそれほど多くはないということでした。そんな販売見込みの薄い(いつ売れるか分からないような)商品は、買取価格も渋くなるのも当然ですよね。

それに対して、知名度抜群、誰もが憧れるロレックスであれば、中古であっても欲しい人はたくさんいるわけです。すなわち需要が多く、即販売が見込めるので、高い価格で買い取ってくれるわけです。

しかし当時の私は、すでに値上がりして手が出しにくい価格となってしまっているロレックスに比べ、まだ手頃な価格の中堅ブランドにこそ、値上がりの余地があると、魅力的に感じてしまったのでした。

今思えば、中途半端に手頃な中堅ブランドをいくつも買うのであれば、価格は高くても、思い切ってロレックスをもう1本買うべきだったと後悔しております。

バリュー投資の感覚では、失敗する?

実は、ロレックスではなく、中堅ブランドを選んだ理由は、「手頃な価格」「値上がり余地あり」以外にも、もう1つありました。

それは、中堅ブランドは、圧倒的にコスパが良いこと。

とくにオリスやフレデリック・コンスタントは、その品質に対して、価格が非常に抑えられているブランドとして定評がありました。

もちろん、ロレックスも非常に高品質ですが、価格とのバランスで言えば、(中堅ブランドと比べて)コスパは決して良くはありません。言い換えれば、価格に占めるブランドの割合が大きく、どうしても割高感は否めないのです。

しかし、そのブランドこそ需要のもとになることは、前述のとおりです。

それを私は、株式投資、とりわけバリュー投資(*)の感覚で、腕時計の価値そのもの(実質価値)を値踏みして判断していたことが、失敗の要因だったと分析しております。

*現在の株価が、会社の利益水準や資産価値などから、割安か割高かを判断する投資手法