妻たちの「離婚できない理由」

そこで「離婚をお望みですか」と水を向けると、被害妻たちは小さく頷くが、その後、数々の「離婚できない理由」を述べ始める。まるで「脳内モラ夫」に喋らされているかのようだ。

大貫憲介・榎本まみ『私、夫が嫌いです モラ夫バスターが教える“なぜかツライ”関係から抜け出す方法』(日本法令)より(漫画=榎本まみ)
大貫憲介・榎本まみ『私、夫が嫌いです モラ夫バスターが教える“なぜかツライ”関係から抜け出す方法』(日本法令)より(漫画=榎本まみ)

【被害妻の「離婚できない理由」】

① 「怒らせる私が(も)悪い」「私も反撃しており、モラハラはお互い様」「私の家事、料理は不十分」など、「私も悪い」ので「離婚できない」。

② 次に、子どもたちのことである。「子には父が必要」「パパに懐いている、パパが大好き」「(離婚したら)進学費用が心配」など、子どもたちのために「我慢する」。

③ 妻自身の両親が反対している。父親、母親から、「それくらい我慢しなさい」「子どものことを考えろ」などと諭され、離婚への決意が鈍くなる。

④ 夫を怒らせたくない。「離婚したいなどと言ったら怒り出すに違いない」と考えて、怖くて思考が停止してしまう。

⑤ 「この結婚を失敗にしたくない」「結婚した以上、離婚してはいけない」「離婚は負け」など、離婚=自分自身を否定する選択ととらえてしまって選択できない。

これらの「離婚できない理由」は、おそらくどれも正しくない。しかも、法律相談に訪れる被害妻たちは、「正しくない」とどこかでは感じ取っている(だからこそ、離婚を希望して法律相談にきている)。だが、周りからの毒バイス、自らの心に刷り込まれているモラ文化、そして脳内モラ夫などが、「離婚できない理由」を被害妻たちの心の中で言い立てるのだ。

いわば、「離婚したい」自分と「離婚できない」自分との葛藤がある。おそらく読者の中にも、そのような葛藤に悩む妻たちが多くいるはずだ。

「俺を怒らせるお前が悪い」

モラ夫は、「俺を怒らせるお前が悪い」と妻をディスり、家事や「妻」としての不足をあげつらう。日常的にディスられ、不足を指摘され続けると、妻は「私が(も)悪い」と思い込んでしまう。つまり洗脳である。

モラ夫の狙いは、妻に対して優越性を確保し、支配することだ。そのために妻をディスったり、不足を指摘するのであって、妻の落ち度の有無、程度は本質的な問題ではない。つまり、モラ夫は妻に落ち度があってもなくてもディスる。