運動で「貯める脂肪」を「燃やす脂肪」に変える

運動を行うことで、脂肪の性質も変わります。“太る脂肪”から、“やせる脂肪”に変わるのです。

池谷敏郎『血糖値はたった1分の習慣で下がる!』(秀和システム)
池谷敏郎『血糖値はたった1分の習慣で下がる!』(秀和システム)

「え? やせる脂肪ってどういうこと?」と思いますよね。

脂肪には、「白色脂肪細胞」と「褐色かっしょく脂肪細胞」という性質の違う2種類があります。

白色脂肪は、中性脂肪を貯め込んでどんどん膨れていく脂肪です。脂肪と聞いて一般的にイメージされる、エネルギーの貯蔵庫が白色脂肪です。

一方、褐色脂肪は中性脂肪を燃焼して熱をつくります。

白色脂肪と褐色脂肪は、正反対の働きをするのです。

つまり、白色脂肪が増えれば太り、褐色脂肪が増えるとやせやすくなります。

ただ、褐色脂肪は大人になるにつれて少なくなり、40歳頃から急激に減り、60歳頃にはほとんどなくなってしまいます。これが、中高年になると太りやすい原因のひとつと言われています。

ところが、ここで朗報です。

効率よく有酸素運動を行うと、白色脂肪が褐色化することが分かってきました。

「ベージュ脂肪」といって、エネルギーを貯め込む貯蔵庫だった脂肪が、エネルギーを燃やし熱を作りだす脂肪に変化し、褐色脂肪と同じような働きをするようになるのです。そうすると内臓脂肪が減ってインスリン抵抗性が改善され、血糖値も下がりやすくなる。

運動で脂肪の性質が変わると聞くと、なんだかやる気になりませんか?

リモコンを手に家でテレビ鑑賞中
写真=iStock.com/StudioMikara
※写真はイメージです

ベストは「食後30分~1時間」

食べた後、イスに座ってじっとしていませんか?

あるいは、寝転がってテレビを見たり……。

テレビを見ながらでもいいので、体を動かせば、食後の糖の吸収がゆるやかになり、高血糖を防ぐことができます。

食べた糖質が体内でブドウ糖にまで分解されて、小腸から吸収されていくと、血管に入って血糖値が上がる。そのピークが、だいたい食後30分から1時間ぐらいです。

だから、食後30分から1時間は、食べすぎちゃった分を帳消しにできる、私たちに与えられたチャンスなのです。

血糖値の急上昇を防いで血管を守ることができれば、全身のコンディションの改善が期待できます。肌のコンディションも良くなります。

たった1分のエクササイズで、血管年齢も肌の若返りも期待できるのです。

池谷 敏郎(いけたに・としろう)
池谷医院院長、医学博士

1962年、東京都生まれ。東京医科大学医学部卒業後、同大学病院第二内科に入局。97年、医療法人社団池谷医院理事長兼院長に就任。専門は内科、循環器科。現在も臨床現場に立つ。生活習慣病、血管・心臓などの循環器系のエキスパートとしてメディアにも多数出演している。東京医科大学循環器内科客員講師、日本内科学会認定総合内科専門医、日本循環器学会循環器専門医。