男性に高年収を求めないで
ただ、そのためには、男性と女性、双方の価値観をセットでアップデートする必要があるんじゃないかと思います。女性の方も、本気で考え直してほしいんですよね。
今年6月に内閣府の男女共同参画局が発表した「男女共同参画白書」にも書かれていますが、今も20代から60代のすべての年齢層で、3~4割の女性が、結婚相手は自分よりも年収が高い方が望ましいと答えています。まだまだ、男性、特に結婚相手に対して、高年収を求める女性は多い。
でも、「年収を上げなくては」となると、男性の側も、昇進の椅子取りゲームから降りることができなくなってしまいます。男性も、もっとそれ以外の活躍の方法を選択していいはずです。
こうした価値観というのは、本当に変えるのが難しく、僕自身も、1970年代生まれの昔ながらの「男性の美徳」みたいなものを学び落とそうともがいているところです。女性と食事をしたときには「男性がごちそうすべきじゃないか」と思ってしまうし、「プロポーズは男性からすべきじゃないか」とか、「男性なんだからちゃんと稼がないと。強くないと」と思っているところがある。そういった意識を変えていかないといけないと思っています。
どんどん話してみてほしい
例えば、子どもたちに対しても「男の子は青で、女の子はピンク」といった決めつけをするのはよくない。でも、「親の意見はバイアスを与えてしまうことになるので言うべきではない」というのも、ちょっと違うと思うんです。親子のコミュニケーションが減ってしまいますから。「この話題には触れない」というのではなく、「僕らが子どもの頃はこんなふうに言われていたけれど、そのままでいいわけじゃないよね」と、世代ごとのバイアスがあるという前提を認めた上で話し合うといいと思います。
自分が持っている偏見や思い込みを認めて、妻のように自分と異なるジェンダーの人や、子どもたちのように自分と違う世代の人と話し合うきっかけにする。「企業が」「政府が」と、制度を変えることも大切ですが、家庭など、自分の足元で「どう変わるといいんだろうね」とコミュニケーションを増やすことが必要なんじゃないかと思います。
「マッチョじゃない起業」も増えてきた
ユニックでは「Your(ユア)」という女性起業家の支援事業を行っています。事業アイデアを持つ女性を募り、複業メンバーとしてユニックに参加してもらって、最初はユニックの中で新規事業として立ち上げます。そして事業が軌道に乗ったあとで分社化して株を持ってもらい、起業家になってもらうのです。こうして、オーダーメイドのネイルサービス「YourNail(ユアネイル)」や、1カ月後の自分に手紙を書くサブスクリプションサービス「LetterMe(レターミー)」、更年期カップル向けのコミュニケーションプログラム「よりそる」など、さまざまな事業が生まれました。
女性起業家を取り巻く環境は、ここ数年で確実に変わってきています。5年前、10年前は、女性が起業するというと「腹をくくって、結婚や出産は当面あきらめる覚悟がないとムリ」と言われていましたが、今はそんなことはなくなってきています。全力で短距離走で走り抜けるような、マッチョなスタイル以外で成功する人たちが出てきています。
それは女性だけでなく男性もそうで、24時間を仕事に捧げるのではなく、自分のペースで働き、プライベートや子育ても重視しながら起業する人が増えています。
そもそも起業のメリットは、自分たちに合った働き方を作れるところにあります。「月曜日から金曜日、朝9時から夕方5時まで会社で働く」といったスタイルにこだわる必要はまったくない。実際ユニックも、全員が複業で完全リモートです。