「リスク限定型」商品の中身

具体的に考えてみましょう。リスクをあまり取りたくない人で、それでも投資をしたいというのであれば、自分の資産運用全体の中でリスク商品の割合をそれほど多くせず、残りは定期預金などの価格変動のない商品で運用すればいいのです。全くリスクを取りたくなければ、そもそも投資はしない方がいいですし、少しぐらいのリスクは取ってみようということであれば自分の金融資産全体の内の1割とか2割程度を株や投信などのリスク資産に回せばいいだけのことで、これはごく単純な話です。

にもかかわらず、世の中には投資初心者向けと銘打った「損失限定型」とか「リスク限定型」といわれる投資信託はとてもたくさんあります。具体的に、あるリスク限定型投信の中身を見てみると、全体の資産配分の中で内外の株式に10%程度で、残りは短期金融商品となっています。短期金融商品というのは金融機関同士でお金の貸し借りをおこなうことで資産運用する商品のことで、コールローンや譲渡性預金(CD)、コマーシャルペーパーといったものがそれにあたります。これらも現在では超低金利です。ところが、その投資信託の信託報酬(運用管理費用)は何と0.8%を上回っているのです。仮にこの投資信託を100万円買えば、毎年支払う信託報酬は8000円を超えます。

チャートを表示するタブレット
写真=iStock.com/courtneyk
※写真はイメージです

手数料に40倍の差…金融機関が教えないこと

一方、同じ100万円の内、10万円だけ国内や海外のインデックス投信を購入し、残りの90万円を預金にしておけばどうでしょう。この場合にかかるコストは手数料の安いインデックス投信なら0.2%以下の水準の手数料のものもたくさんあります。つまり10万円の0.2%ですから200円程度の手数料を払えばいいわけです。先ほどのリスク限定型投信を購入する場合と比べると、同じ効果が得られるにもかかわらず手数料の違いは8000円と200円ですから40分の1で済みます。

もちろん、どちらの運用成績がどうなるかは株式部分の運用次第なので一概には言えませんが、コストだけは確実に安くなるのであれば安い方を選ぶのが賢明であることは間違いありません。これはiDeCoや企業型確定拠出年金において商品を選ぶ際にも言えることです。

金融機関の中には「自分で運用しろといってもどうやっていいのかわからない初めての人にはリスクの低い商品が適している」としてリスク限定型投信を提供しているところもありますが、そんな手数料の高いものを購入するぐらいなら前述の方法によって、簡単に自分で組み合わせたほうがずっとお得です。本当はそういう方法を教えることが投資教育だと思いますが、投資教育を実施している多くは金融機関なので、あまりこういうことは教えません。