何を自分の未来に持っていきたいか

そのうえでもう一回家の中を見てもらうと、今まで残してきたものが大して必要ではなかったこと、自分がどんなものに執着しているかなどを分析できる。それは西崎さん自身も経験したことだ。離婚後まもなく、中3の息子から「もう友だちを呼んでいい?」と聞かれて、ハッとした。小学生の時は自宅が子どもたちのたまり場になり、ママ友たちもよく来ていた。だが、中学へ入るタイミングで前夫がリストラされ、家庭は荒んでいく。西崎さんは夫が家にいることを隠したくて、「もう友だちは呼ばないで」と言っていたのだ。

写真提供=Homeport
片付けを通して女性たちの悩みに寄り添っていく。

「離婚しても、前の主人が残していったものがいっぱいあったし、私がストレス買いしたものも増えていたので、2トントラックで2台分のゴミとして捨てたんです。すると、気持ちがすごくスッキリしたので、たぶん皆もそうだろうなと思いました。未来への不安から残しておいたもの、過去への執着心から捨てられないものもあったけれど、それを手放したら本当に自分がやりたかったことも見えてくる。何を自分の未来に持っていきたいかを見据えて、そこを目指すのです」

家を片付けることで家族の関わり方も改善されていく。どんな暮らしをしたいかと考えていくと、自分一人でなく家族がチームになることも欠かせない。それが「家庭力」アップにつながるのだろう。

最初のセミナーは申し込みがたった1人だった

プロジェクトは2018年1月から福岡でスタートし、夏には東京で初めて開催した。それは西崎さんが数年ぶりに上京した際、学生時代の友だちから「東京で働くママたちはすごく大変」と聞き、仕事や家事、子育てに忙殺されているのでセミナーをやってほしいと頼まれていたからだ。

ところが、いざ説明会を開いても「やりたい」と声をあげてくれた人はたった一人……。何とか人づてに5、6人集めて、セミナー開催にこぎつけた。すると、参加者がブログに書いてくれ、それを見た大阪の人から「ぜひ大阪でも開催してください」と連絡があった。翌年には大阪でもスタートし、開催地が広がっていく。西崎さんはずっと一人で講師をしてきたが、受講生の中に整理収納アドバイザーの資格を持った女性がいて、彼女と二人三脚の体制に。翌2020年にはオンライン講座を開始した。