「私は“菩薩行”をやっているんだ」

嫁姑間がこじれる多くのケースは、「ここまでやってあげたのに、お義母さんからは感謝の言葉がない」とか、「うちの嫁は孫に土産を渡しても嬉しそうな顔ひとつしない」など、相手に何かを期待をして、それが裏切られたことが発端になることが多い。ですから、Aさんには、「相手に期待しないこと。そして、つらい時は『四摂法』を思い出し、四つの教えをうまく組み合わせながら実践してみて」とお話ししました。

「四摂法」を実践すると、お姑さんからいじわるをされても、「私は、菩薩になるための修行、“菩薩行”をやっているんだ。この意地悪いおばあさんを、どうやったら救ってあげられるかしら」と考えられるようになってきます。孫悟空を手のひらに載せて、上から見守るお釈迦様のような心境です。そうすると心の置き場ができて、心が軽くなります。実際、Aさんは今ではお姑さんと衝突せずうまくやっているそうです。

もうひとつ、あらゆる人間関係に効く、万能の言葉があります。私は、イヤな相手に意地の悪いことを言われたら、「その通りですね。ありがとうございます」と返すようにしています。この「ありがとう」こそ万能で、上手に何度も使っていれば、相手の気持ちを和ませ、嫌みやマウンティングを止められるようにもなります。

関係を切る前に「四摂法」を実践する

しかし世の中には、こちらがいくら受け止め方を変えてもしつこく悪意をぶつけてくる人というのはいます。一緒にいるとつらくなり、自分の心身に影響が出るようであれば、そんな関係は切ってもいいと思います。

ただ、その前に、まずは先ほどお話した「四摂法」を試してみてください。

ちょっとしたいただきものをおすそ分けするなどの「布施」を行い、歩み寄りの心を持つ。いくらお姑さんが上から目線でマウントを取ってキツいことを言ってくるようでも、「お元気でしたか?」「元気そうでよかった」と優しい言葉をかける「愛語」を実践する。布施や愛語を行うときも、見返りは求めない。「後から優しい言葉をかけてもらおう」などと思わず「利行」を貫く。

そして最も大切なのが「同事」です。「キツくあたってくるのは、息子を取られたように感じているからじゃないか」「自分が若いときに、姑から同じように意地悪をされたからじゃないか」など、相手の身になって想像してみる。それで自分のつらさが軽減されるとは限りませんが、「同事」の心を持つことで、少しは「この人はこういう人だから」と相手を受け入れる気持ちが持てるかもしれません。