危機対応では高い評価
首相就任直後にコロナのパンデミックが起こり、ロシアのウクライナ侵攻でも対応を迫られるなど、マリン首相の就任後2年半は危機の連続だった。
コロナでは、いち早く2カ月間のロックダウンを行い、現在多くのフィンランド国民が使っているコロナ追跡アプリも導入した。おかげで、ヨーロッパの中でも感染者数、死者数ともに低く抑えられた。また、頻繁に記者会見をするなど、国民への説明も丁寧だったという。
ほかにも、義務教育を18歳まで延ばしたり、長年の懸案だった社会保障改革に取り組んだりと、福祉国家としての政策を積極的に進めている。
もともと、彼女の政治的なスタンスはリベラルで左寄りだ。
EUで激しい議論が続く難民の受け入れに関しても積極的だ。また、人々がもっと家族と一緒に過ごせるよう週休3日にするべきだとも述べている。そして、ジェンダー平等、ホームレス支援にも力を入れており、2027年にはこれらの問題を完全に解決したいと述べている。
マリン首相は、これまで危機対応で評価されてきた。しかし今後、平時に戻った時に、どのように国民の評価がくだるかは未知数だ。実際に、最近の世論調査では支持率に陰りが見え始めている。
支持率には陰りも
昨年末に発表されたカンターTNSによる世論調査によると、マリン首相の支持率は、2020年の夏の80%から、53%に落ちたという。政府に対する支持率も71%から48%に減っている。
「与党の宿命とも言えますが、与党は常に批判されます。(マリン首相の)社民党が特に目立って落ち込んでいるわけではないですが、政党支持率の直近の調査では、野党第一党が1位を獲得しています」と柴山さんは言う。
そして、「一時の危機的な状況から脱して落ち着いてくると、コロナで職を失った人の不満も噴出してくるでしょうし、ロシアとの断絶で起きる経済的なマイナスも見えてくるでしょう。もっと批判がでてくるかもしれない」と指摘する。