掃除をすると相手の立場になって考えられるようになる

掃除は5Sの基本のキで、相手の立場になって考えるという仕事の大事な習慣づくりにもつながります。

私たちの会社は、来社されたお客様が、社員が働く場所を通って応接室に向かう動線になっています。ですから、デスクのまわりを整理整頓するときでも、来社されたお客様が不快な思いをしないようにという気持ちが生じます。

また、会議室を掃除するときには、次に会議をする人が、心地よく打ち合わせできるようにという思いを込めます。

先ほど触れたトイレの洗面台の水はねをキレイにしていた新入社員は、次に使う人が気分よく洗面台を使えるようにと思いながら、水はねを拭きとったはずです。

このように多くの人が共同で利用する職場の清掃は、自分はもちろん、ほかの人が何をどういう気持ちで利用するのかを想像しながら行うもの。

それは、相手の立場になって考えるということなのです。

後工程を考えながら仕事をする

どんな仕事でも、相手の気持ちを配慮することは大事です。営業部なら取引先の気持ちを、社内のスタッフ部門なら社員の気持ちをくみとるでしょうし、自分の仕事の後工程を担う人のことを考えて、自分の仕事をこなすことも大事です。

自分の仕事が遅れてしまうと、後工程の仕事をする人に時間的に負担をかけてしまう。そう考えれば、自分勝手に物事を進めたり、自己満足に終止したりすることを避けられるでしょう。

お客様は、どういう気持ちで商品やサービスを使っているのかを考えながら仕事をする。掃除は、その習慣づくりに役立つのです。

「上司にいわれたから、とりあえずやっておく」という受け身で掃除をするか、それとも次に使う人の立場になって考えて自ら進んで掃除をするか。

後者のように日々掃除をすることで、長い目で見れば会社員としての成長に差が生じるのではないでしょうか。

玉置 泰子(たまき・やすこ)
サンコーインダストリー 総務課長

1930(昭和5)年5月15日生まれ。商業高校を卒業後、25歳で三興鋲螺(現・サンコーインダストリー)に入社。以来66年にわたり、経理や庶務の業務を担ってきた。現会長より11歳年上で勤続年数も長いことから、同社の歴史を知る語り部として新人研修の担当もしている。2020年11月「世界最高齢の総務部員」としてギネス世界記録に認定される。