働く女性にとって、セクハラは今も深刻な問題だ。「セクハラ」という言葉が一般的ではなかった時代から政治記者として活躍し、全国紙で女性として初めて政治部長に就いた佐藤千矢子さんが自身の経験を明かす――。

※本稿は、佐藤 千矢子『オッサンの壁』(講談社現代新書)の一部を再編集したものです。

私の記者人生で見てきた「セクハラ」

ハラスメントにはさまざまな種類があり、主なものだけでも、セクシャル・ハラスメント(セクハラ)、パワー・ハラスメント(パワハラ)、ジェンダー・ハラスメント(ジェンハラ)、マタニティ・ハラスメント(マタハラ)、パタニティ・ハラスメント(パタハラ)、モラル・ハラスメント(モラハラ)、票ハラスメント(票ハラ)などがある。

毎日新聞社 佐藤千矢子さん
毎日新聞社 佐藤千矢子さん(撮影=森 清)

今回は、セクハラを取り上げたい。

2017年10月、米ハリウッドの大物映画プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタイン氏が長年にわたり女優らにセクハラや性的暴行を繰り返してきたことが米紙ニューヨークタイムズの記事で告発された。これをきっかけにSNS上に「私も」と被害体験を告白する動きが「#MeToo(私も被害者)運動」として世界に広がった。

ちょうどそのころ、Yahoo!ニュース特集編集部が、毎日新聞、日本テレビ、フジテレビの女性政治部長3氏の座談会を企画し、私も出席した。2017年12月のことだ。その中で、当然、セクハラもテーマになった。

司会役から「目下、日本でも世界でも職場などでのセクハラに対して声があがるようになっています。男性議員から女性記者へのセクハラはありましたか」との質問が投げかけられた。

当時、日本テレビの政治部長だった小栗泉さんが、フジテレビの政治部長だった渡邉奈都子さんと私を見ながら「小栗 昔は……(と2人を見つつ)、ありましたよね?」と言うと、「佐藤、渡邉 (沈黙ののち、笑い)」という書き出しになっている。

この時、私は内心「昔はあったが、今もなくなっていない……」と思ったが、ネットメディアの座談会で他の人のことを勝手に話すわけにはいかない。そこで、この場では自分が過去に経験した中から二つのセクハラのケースを紹介することにした。記事に採用されたのは、そのうちの一つで、次のような話だ。