共感する。寄り添う。事実を世に問うために

東京新聞社会部の記者として、本来の私の活動は裏方です。現場に駆けつけ、周辺取材を重ね、事実を文字にして「伝える」。それが日々の業務です。ただ菅義偉官房長官(当時)の定例会見に出席し、質問を重ねる姿がメディアで取り上げられ、自ら発信する機会も増えてきました。

新聞記者 望月衣塑子さん
新聞記者 望月衣塑子さん

日本の政治や社会に問題意識をもっていると、あまりに虐げられた声なき声や、それらを消そうとする大きな力に出合うことが多くあります。海外メディアの大々的な取り上げ方と、日本国内の小さな報道のギャップに首をかしげることも少なくありません。そんなときは、だからこそ、その奥に何が潜んでいるのか。隠したい事実があるのではないか。そこに光を当て、明るみに出す。傷つけられた人々の小さな声を、大きな声にして世に「伝える」。それが私の使命だと思っています。

そのためにまず必要なのは、「共感し、寄り添う力」ではないでしょうか。被害者とされる人々は、記者がどれだけ熱意をもっているか、自分たちの立場で物事を考えられるか、ものすごく敏感です。過剰な感情移入は避けるべきですが、彼ら彼女らの繊細な想いをくみ、声を聞き続けることで、記事に厚みが出て、説得力が増すと考えているのです。