年金は夫婦で13万円まで減少する
私は、最近、『長生き地獄にならないための老後のお金大全』(KADOKAWA)を上梓しました。この本は、年金だけでなく、老後の仕事と暮らし、医療・介護、相続や贈与、税金や社会保険料負担から終活にいたるまで、老後のすべてが分かる百科事典のような存在なのですが、本稿では、主として50代のみなさんに焦点を絞って、老後をどう生き抜いたらよいのかという視点から、書籍のエッセンスをご紹介したいと思います。
現在の厚生年金世帯が受給している平均年金月額は、夫婦合計で21万円です。しかし、この支給額は、30年後に13万円まで下がります。約4割の減少です。厚生労働省は、今後も年金は増え続けていくと主張していますが、そんなことはあり得ません。
いまの公的年金は「賦課方式」で運営されています。つまり現役世代が支払った年金保険料を、その時点の高齢者で山分けする制度になっているのです。今後の少子高齢化で、保険料を支払う現役世代の数は減り、山分けをする高齢者の数は増えていくのですから、年金給付は減少せざるを得ないのです。それでは、厚生労働省はなぜ年金は減らないと主張しているのでしょうか。
実は、厚生労働省の将来推計には、現実離れした前提条件が、いくつもあるのです。第1は、実質賃金が毎年1.6%も上昇し続けるということです。実質賃金が上昇すれば、年金保険料収入も増えますが、現実には、1997年以降、日本の実質賃金は四半世紀にわたって下がり続けています。
介護施設から会社に出勤するのが普通になる⁉
第2は、労働力率の想定です。厚生労働省の想定では、60歳台後半の4分の3が働き、70歳台前半でも半数が働くことになっています。しかし男性の健康寿命は72歳です。介護施設から通勤しない限り、こんな労働力率は達成できません。
第3は年金積立金の運用利回りです。名目で5%、実質で3%の高利回りが想定されていますが、金利ゼロの時代に、そんな利回りが達成できるはずがないでしょう。こうした極端な想定をやめて、普通に人口構造から推計すると、30年後の厚生年金世帯の夫婦の年金月額は13万円になります。
その数字は、厚生労働省の「財政検証」で、最も厳しい想定を置いた時の推計結果と、ぴったりと符合しています。