一人社会実験の結果、月13万円の暮らしは十分に可能

一方で、物価は安いですし、都心に出稼ぎにでることもできます。自然が豊かで、物価が安いという大きなメリットもあります。医療機関や商業施設もそこそこ充実しています。

「そんなにうまい話があるはずがない」と思われるかもしれません。

しかし、私はもう37年もトカイナカ暮らしを続けています。正確に言うと、コロナ前までは、平日は東京の事務所に泊まり込んで「平日都民」の暮らしをしていたのですが、いまはトカイナカに拠点を完全に移しました。そして、コロナ禍のこの2年間、年金13万円時代に自分が耐えられるか、一人社会実験をしてきたのです。

30坪の農地でほぼ自給自足は可能

結果は、十分暮らせるという確信でした。トカイナカには、東京のようなおしゃれなレストランやブランドショップはありません。でも、ファミリーレストランや地元のうどん店でも十分美味しいですし、着るものはイオンのバーゲン品で十分です。東京のようなキラキラしたエンターテインメントはありませんが、その分、豊かな自然があります。

森永卓郎『長生き地獄にならないための老後のお金大全』(KADOKAWA)
森永卓郎『長生き地獄にならないための老後のお金大全』(KADOKAWA)

コロナ禍になってから、私は自宅近くの耕作放棄地を借りて、いま30坪余りの農地で野菜や果物を育てています。そのため、冬場を除けば、ほぼ自給ができています。もちろん肉や魚は購入するのですが、食費は大してかかりません。

住宅ローンは残っていないので、家賃負担はありません。ですから、普段の暮らしを続けるだけなら、月額13万円で十分家計が回るのです。もちろん、さまざまなテクニックを使って家計の節約に努めていますが、その中身は書籍をご覧いただければと思います。

つまらない老後の暮らしだと思われますか。そんなことはありません。畑は毎日出かけても、飽きることがないほど、仕事があります。雨が降ったら家で本を読めばいいのです。皆さんも晴耕雨読の暮らしをしてみませんか。

森永 卓郎(もりなが・たくろう)
経済アナリスト、獨協大学経済学部教授

1957年生まれ。東京大学経済学部経済学科卒業。専門は労働経済学と計量経済学。著書に『年収300万円時代を生き抜く経済学』『グリコのおもちゃ図鑑』『グローバル資本主義の終わりとガンディーの経済学』『なぜ日本経済は後手に回るのか』などがある。