「リアルの展示会では、たまたま近くを通りかかったからというお客様も少なくありませんでした。それに比べてウェビナーの参加者は、そもそも協働ロボットに関心がある、購入を検討している方なので、具体的な商談へとスムーズに展開しやすくなりました。
住んでいる場所や働いている場所を選ばずに、全国から参加していただけるのも大きいですね。ウェビナー方式にしたことで、顧客開拓のチャンスが一気に広がりました」
営業の間口を大きく広げてくれたウェビナーだが、それを成功させるには「飽きさせないことが何より肝心」と藤原さん。協働ロボットの説明を淡々とするだけでは、見ている人の関心はすぐに薄れてしまう。そのため、ロボットを実際に動かすデモやウェビナー用に作成した動画を取り入れるなど、興味を持ち続けてもらえる内容にすることが重要だ。
ユニークな動画配信で顧客の関心をつかむ
オンラインを活用したもうひとつの戦略が、YouTubeチャンネルでのコンテンツ配信だ。女性営業チームのメンバーが協働ロボットについて一から学ぶコンテンツを配信。そのユニークさは、顧客や業界から大きな評判を呼んでいる。
「機械や部品、金属加工メーカーが私たちの主なお客様ですが、この業界の企業が発信するYouTubeのコンテンツは、ほとんどが堅い内容ばかり。だったら、もう少しやわらかく楽しんでもらえるものにできないか、というのがアイディアの起点でした」
そこで目をつけたのが、テックウーマンのチームメンバーで、新卒1年目(当時)のロボットとは縁遠い文系女子社員たちだ。
「そんな彼女たちが協働ロボットを理解して使えるようになる様子を、リアルな成長物語として配信したらおもしろいのでは、と」
この戦略が大当たりし、毎回、配信を楽しみにしてくれている顧客も。商談の中で、相手の関心を引く雑談ネタとしてもうまく活用している。
「コンテンツの中には、私たちの営業チームがお客様を訪問して、協働ロボットの実例を学ぶというものもあります。訪問の様子をお客様の会社のYouTubeチャンネルでも配信してビュー数のアップに貢献。私たちにとってもお客様にとってもWin−Winな結果となりました」
「オンラインは追い風」と言い切る藤原さん。だからこそ、オンライン活用の戦略もより綿密に考えている。
「コロナ禍でお客様への訪問ができなくなったときはロボットの勉強をして、その後の営業に生かしました。オンライン会議の前には商談のストーリーを細かく打ち合わせて、誰がどのタイミングで何を話すかの役割分担を決めておくようにしています」
最初から資料をすべて提示しないことも、営業テクニックのひとつとして有効だ。
「ここから先は次回のオンラインで詳しくご説明させていただきますとお伝えすることで、次の商談にスムーズにつなげています」
山善 トータル・ファクトリー・ソリューション支社 大阪支店 FA課 主任
1986年生まれ。2010年、山善に入社し、14年に1度退職。同年タイの現地法人に入社し、3年間をタイで過ごす。その後帰国し、山善に再入社。18年から営業として業務を開始。19年から協働ロボット「TECHMAN」の女性営業チームのリーダーとして拡販に注力。
撮影=水野浩志