※本稿は、池田きぬ『死ぬまで、働く。』(すばる舎)の一部を再編集したものです。
定年後も再就職、フルに働き続ける
56歳のとき、20年近く勤めたT病院を定年退職しました。1980年当時、定年の年齢はそのくらいが普通でした。最後の1年は、総婦長さんが先に定年退職をされたので、私が総婦長をやりました。
そして、次の職場を紹介してもらい、また精神科の病院で総婦長として勤務しましたが、通勤時間が長かったこともあって、3年ほどで退職しました。そろそろ次の職場に行きたいなと思っていたら、別の病院から「総婦長として来ませんか」と誘われて、今度はそちらで働くことにしました。
次の職場に行きたいなと思っていると、タイミングよく新しい仕事の声をかけてもらえることが多かったですね。
体調を崩した40代、50代
定年で仕事を辞めてしまう人もいますが、私はまだ元気で、働きたい気持ちは十分にありました。40代、50代は胆嚢炎や子宮筋腫の手術をしたり、体調が悪いこともありましたが、60代で病抜けしたのか、その後は元気になり体もよく動きました。
59歳のときに総婦長になったのは、精神科ではなく、リハビリを中心にしたS病院でした。介護老人保健施設(老健)が今ほど発達していなかったので、高齢者の社会的入院(治療の必要のない患者さんが長期入院すること。自宅看護が難しい高齢者が入院を続けることもあった)も多かったですね。
私はどちらかというと現場主義でした。総婦長として机の上での仕事がないときは、病棟に行って患者さんやその家族の話を聞いたり、忙しいスタッフの仕事を手伝ったりしたいなと思っていました。
時々病棟に行って、患者さんの爪を切りながら話を聞いたことも。長いこと社会的入院をされている患者さんの中には、爪が長いままの人もいたんです。現場の看護師は日々忙しいので、そこまで手が回っていなかった。私にとっては、現場のフォローもしながら、患者さんの声を聞ける貴重な機会でした。