「幸せ太り」はごく自然な現象
理想の相手と添い遂げ、幸せに暮らしたいと願うのは、人間の自然な欲求です。これを達成するためにも、さまざまな努力を行うのもごく自然で、合理的な行動だと考えられます。
この行動の一環として、BMIの管理が行われるわけです。そして、結婚という形で市場から退出する際、BMIを管理する圧力もなくなるため、自然と体重も増えていく。なお、図表1を見ると、結婚1年前から結婚年までBMIが急上昇していますが、これは結婚相手が見つかった(婚約)段階で気が抜けてしまうことを意味しているのかもしれません。
以上が経済学の視点から見た「幸せ太り」のメカニズムです。
さて、このメカニズムが働いている場合、離婚して再度結婚市場で相手を探すようになると、自分の体重や見た目に気を配るようになると予想されます。
また、結婚しているのに恋愛関係となる相手を探す不倫でも、同じように自分の体重や見た目に気を配るようになると考えられます。
市場の中で「職探し」ならぬ、「相手探し」を行う際、目標達成のために人々の行動が変化するというわけです。
1982年生まれ。慶応義塾大学商学部、同大学院商学研究科博士課程単位取得退学。博士(商学)。専門は労働経済学・家族の経済学。近年の主な研究成果として、(1)Relationship between marital status and body mass index in Japan. Rev Econ Household (2020). (2)Unhappy and Happy Obesity: A Comparative Study on the United States and China. J Happiness Stud 22, 1259–1285 (2021)、(3)Does marriage improve subjective health in Japan?. JER 71, 247–286 (2020)がある。