『ジャングルの王者ターちゃん』のヂェーンと「幸せ太り」
皆さんは『ジャングルの王者ターちゃん』という漫画をご存じでしょうか。
徳弘正也先生の名作で、『週刊少年ジャンプ』に1988年から1995年まで掲載されていました。アラフォー世代の方には懐かしい作品ではないでしょうか。
主人公は圧倒的な強さでジャングルの平和を守るターちゃんです。このターちゃんには妻のヂェーンがおり、結婚前はモデルをしていました。結婚後、ターちゃんと暮らす中で太ってしまい、結婚前とは別人のような姿になっています。
このヂェーンのように、結婚後に体重が増えてしまう傾向を「幸せ太り」という場合があります。
「幸せ太り」は昔から言われる現象ですが、そのメカニズムには諸説あります。今回はこの「幸せ太り」のメカニズムを経済学の視点から解き明かしてみたいと思います。
結婚後、実際に肥満度は上昇するのか
「幸せ太り」は結婚後に体重が増えてしまう傾向を指していますが、そもそもこれは実際に観察されるのでしょうか。
日本とアメリカのデータを用いた研究結果を見ると、その答えは「YES」です(*1)。
研究では世界各国で比較可能なBMI{体重(kg)÷身長(m)の2乗}が指標として使用されていますが、結婚直後の数年間でBMIが増加し、肥満度が高くなることがわかっています。
図表1は日本の結婚直後の数年間におけるBMIの推移を示していますが、結婚後に緩やかに上昇しています。女性の場合、結婚直後の数年間で妊娠・出産を経験する場合が多いのですが、そのような場合を除外しても、やはり結婚後にBMIが増加する傾向にあります。
また、日本の研究では、結婚によるBMIの上昇は、主にもともとBMIの高い人で強いこともわかっています(*2)。
以上の点から、日本とアメリカでは確かに「幸せ太り」と一致する現象が確認できると言えるでしょう。
ではなぜ、人は結婚直後に体重が増加してしまうのでしょうか。
実はこのメカニズムを経済学でうまく説明することができます。
(*1)①佐藤一磨(2019)「幸せ太りは本当に存在するのか?」日本人口学会第71回大会、2019年6月1日(土)、香川大学にて発表。②Averett, S., Sikora, A., & Argys, L. For better or worse: relationship status and body mass index. Economics & Human Biology, 6, 330–349 (2008).
(*2)Sato, K. Relationship between marital status and body mass index in Japan. Review of Economics of the Household 19, 813–841 (2021).