すぐに「いいね」を押さないで

ただ、日本のメディアや個人も、もっと情報の真偽に気を付けて受け取ってほしいと鍛治本さんは話す。

新しい情報に遭遇した場合は、すぐに「いいね」を押したりシェアしたりせず、少し様子を見たり、反応を保留すべきだというのだ。ネット上では、数日たつと消えていくニュースも多いので、話題にすることで、フェイクニュースに息を吹き込んでしまうということにもなりかねない。「まずは、7秒ぐらい待ってみてください。そうすれば落ち着いて考えられると思います」

偽情報が飛び交う状況は、一過性のものであってほしいと鍛冶本さんは言う。

「これから5年、10年もたてば、生まれた時からネットの中で育った世代が育ち、増えてきます。誰もが『こんな情報は嘘だ』とすぐに見分けられるような社会になってほしいと思っています」

「情報を見極める力」とまでもいかずとも、まずは、私たち一人ひとりが、「ネット上には誤った情報もあふれている」ということを認識すべきだろう。特にSNSでは、流れてくる情報の出どころがわからないことが多い。どこから流れてきた話なのか、情報の出どころを確認し、はっきりしないようであれば、少なくとも鵜呑みにはせず、転送やリツイートで拡散することも避けたい。

そして時には、IFCNのファクトチェックサイトを覗いてみて、ファクトチェックがどのように行われているかを確認してみるといい。そうした個人のメディアリテラシーが問われているのではないだろうか。

大門 小百合(だいもん・さゆり)
ジャーナリスト、元ジャパンタイムズ執行役員・論説委員

上智大学外国語学部卒業後、1991年ジャパンタイムズ入社。政治、経済担当の記者を経て、2006年より報道部長。2013年より執行役員。同10月には同社117年の歴史で女性として初めての編集最高責任者となる。2000年、ニーマン特別研究員として米・ハーバード大学でジャーナリズム、アメリカ政治を研究。2005年、キングファイサル研究所研究員としてサウジアラビアのリヤドに滞在し、現地の女性たちについて取材、研究する。著書に『The Japan Times報道デスク発グローバル社会を生きる女性のための情報力』(ジャパンタイムズ)、国際情勢解説者である田中宇との共著『ハーバード大学で語られる世界戦略』(光文社)など。