気づかれにくい知的障害のケース

早く知的障害の存在に気づかれた場合は、さまざまな支援を受けられるので、障害はあっても、その子なりのペースで発達していけると言える。むしろ問題は、知的障害の存在がわからないまま、普通学級で無理を強いられた場合や、知的障害というほどではない境界レベルの場合だ。

気づかれにくいケースとしては、ある部分の能力が高いため、ほかの能力もそんなに低いはずはないと、周囲が思い込んでしまう場合が多い。

たとえば、言語や社会性の能力が比較的高く、コミュニケーションにあまり問題がないという場合、印象としては、知的障害があるように感じられない。しかし、知覚統合や作動記憶が低いため、学習内容が難しくなると、ついていけなくなってしまう。どうして、こんなことができないんだろうと、周囲は意外に思うわけだが、知能検査をしてはじめて、大きなハンディを抱えていることに気づくことになる。

露骨に嫌な顔をして宿題に手を付ける少女
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小学校までは成績が良いケースも

境界知能は、知能指数が70~80(85とする場合も)のレベルの知能をもつ場合をいう。一般人口の二割近い人が当てはまる。なかには、小学校までは成績がよい子もいる。しかし、勉強内容が難しくなり、抽象的で高度な理解力を必要とするようになると、次第についていくのが苦しくなっていく。努力だけでは、補いきれなくなってしまうのだ。

しかし、周囲からは、高い期待をかけられている場合もあり、次第にまわりの期待が重荷になっていく。一方的に期待を押しつけようとする親との関係が悪化し、反抗や非行に向かうケースや、ゲームや恋愛、薬物乱用など依存的な行為にのめり込むケースもある。勉強では結果が出せない挫折感を、ほかのかたちで発散しようとするのだ。期待に押しつぶされて自信を失い、引きこもりに陥る場合もある。

こうした場合、発達検査を受けて、本人の現実を客観的に知り、親が過大な期待をかけるのを止めることで、事態が改善に向かうことが多い。