※本稿は、岡田尊司『発達障害「グレーゾーン」 その正しい理解と克服法』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。
勉強が苦手になる子どもの5つの原因
勉強が苦手というケースでも、その子のもつ特性はさまざまだ。原因により、大きく5つくらいのタイプに分けられるだろう。
一つは、知的能力が全般に低い場合で「知的障害」と呼ばれる。意外に気づかれにくく、支援からも漏れやすいのは、知能のグレーゾーンで、「境界知能」の場合だ。
また、言語面の能力だけが低いものが、「言語障害」だ。数学は得意なのに、国語や社会が極端に苦手で、話す言葉もたどたどしいという場合に疑われる。
三番目は、全般的な知能は正常範囲なのに、ある領域の学習能力だけが極端に低いもので「学習障害」と呼ばれる。つまり、学習障害は、勉強ができないという意味ではない。漢字を書くこと、文字や文章を読むこと、計算や算数といった一つの領域が極端に弱いところがあるとき、診断される。ある領域に限られていることを示すために、「限局性学習障害」という用語も使われる。
四番目は、知的能力自体の問題によるというよりも、注意力や課題遂行の能力の問題のため、集中力が維持できなかったり、提出期限が守れなかったりして、学業に支障をきたすもので、ADHDが代表である。
五番目も、知的能力自体の低下はないものの、こだわりが強く、関心が偏ってしまうために、好きな教科しか勉強しなかったり、細部にばかり気をとられ、効率のよい勉強ができず、よい成績がとれない場合で、ASD(自閉スペクトラム症)の傾向をもった子によく見られる状況だ。
本稿では、グレーゾーンのケースに多い、境界知能と学習障害を中心に説明することにしよう。