言葉だけではなく「表情」に注意する

特に、部下や同僚の意見を批判する必要があるとき、彼(女)らの表情をよく観てみましょう。怒りや嫌悪が浮かんでいたら、価値観を害されたと感じている可能性があります。

彼(女)らの言い分をよく聞き、それでも批判が必要ならば、彼(女)らの見解を理解したことを示した上で、言うべきことを伝えるとよいでしょう。価値観に関わることがなおざりにされてしまうことが続けば、その環境・集団で自分らしく仕事し続けることは難しいでしょう。そのうち辞めてしまいます。

左右非対称の表情は、本心が顔に表れるのを防ごうとするがゆえに表れる表情。端的に言えば、感情がコントロールされているときの表情です。脳の中で本当の感情とそれを出すまいとする制御機能が混線すると、表情筋が左右非対称に動くのです。部下が健康状態や未来の話をしているときに、左右非対称な表情で「大丈夫です!」「プロジェクトは、計画通り問題なく進んでいます」といった発言をしていたら、本心とは裏腹のことを言っている可能性があります。

心の状態は「眉の動き」に出る

鼻から上が動かない表情は、メッセージを伝える・受け止める意志の弱い、感情が死んでいるときの特徴です。会話をするとき、普通、私たちの眉は動くものです。眉を上げて、話している語彙やフレーズを強調したり、眉を下げ、不同意を示したりします。

メッセージを伝えたり、受け止めたりするとき、私たちは、意識・無意識問わず、眉を動かすのです。しかし、それがないということは、そうした意志が弱まっていることを意味します。感情が死んでしまっている場合すら考えられます。部下・同僚の顔に表情がないとき、口は動くが眉は動かない、そんな表情を見たとき、その部下・同僚の心は弱っている可能性があります。

清水 建二(しみず・けんじ)
空気を読むを科学する研究所代表取締役

1982年、東京生まれ。防衛省研修講師。特定非営利活動法人日本交渉協会特別顧問。日本顔学会会員。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京大学大学院でメディア論やコミュニケーション論を学ぶ。学際情報学修士。日本国内にいる数少ない認定FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人。微表情読解に関する各種資格も保持している。著書に『ビジネスに効く 表情のつくり方』(イースト・プレス)『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』(フォレスト出版)、『0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』(飛鳥新社)がある。