相談できる余裕があれば前兆に気づけた可能性

部下・同僚・上司間に、事あるごとに相談出来るような時間的・精神的余裕があれば、こうした前兆に気づくことができたかも知れません。

しかし、部下・同僚からすれば、「こんなこと上司・同僚に相談していいのかな?」と躊躇してしまい、結局、「突然」が起きるまで溜め込んでしまうのです。上司からすれば、「そんな大きな決断をする前に、そんな大きな問題に発展してしまう前に、一言、相談してくれたらよかったのに」と思う方もいるでしょう。

それでは、どうすれば部下や同僚の本当の気持ちを理解することが出来るでしょうか。

「大丈夫です!」には要注意

何に注目すべきかは、コミュニケーションが行われる状況や、抱える問題によって変わります。発せられている言葉と動作が一致しているか否か、不自然な表情は生じていないか。

清水建二『裏切り者は顔に出る 上司、顧客、家族のホンネは「表情」から読み解ける』(中公新書ラクレ)
清水建二『裏切り者は顔に出る 上司、顧客、家族のホンネは「表情」から読み解ける』(中公新書ラクレ)

部下に「大丈夫か?」と声をかける。すると部下は「大丈夫です。自分はストレスに強い方です」と応える。

しかし、その言葉に具体性が伴っているか等々に気を配る必要があるでしょう。

ここでは、心にわだかまりが生じている、心が弱っている状態を察するためのポイントを説明したいと思います。

それは、怒り・嫌悪の表情、左右非対称の表情、鼻から上が動かない表情です。

自身が属する集団にいる人々の怒り・嫌悪の表情・微表情を読みとれるか否かは、その集団に上手く馴染むことが出来ているか否かに関わっています。

怒りや嫌悪の表情・微表情は、私たちの大切にしたい価値観を反映しているからです。怒り感情は、不正義や目的達成を邪魔する障害が原因になって引き起こされます。

嫌悪感情は、不快なヒト・モノ・言動が原因になって引き起こされます。コミュニケーションをする中で部下や同僚がどんな場面で怒りや嫌悪を感じているかを知ることで、相手の価値観がわかります。

相手が不快になることはしない、あるいは、どのように伝えれば、相手の価値観と共存できるかを考えるきっかけとなるでしょう。