表看板は「宗教」とは限らない

カルト的集団はその多くが全体主義的であり、集団内では個人の自由や権利は保障されません。入った人は自身の思想や行動の自由を捨てて、他のメンバーと一緒に熱狂的に集団活動をするよう求められます。また、集団に対する批判的な言動は悪とされていて、メンバーが互いに監視・密告し合うことも少なくありません。

個人のプライバシーや私生活は極めて制限され、集団活動が最優先されます。そして多くの集団にはカリスマ的リーダーがいることが多く、メンバーは“正しくすばらしい”目的達成のためには自ら進んで、喜んで服従するのが当然とされています。

これらの特徴を備えた集団がカルトです。カルトというと、かつてのオウム真理教のように宗教団体の看板を掲げた集団をイメージしがちですが、実は彼らが掲げる“表看板”は宗教に限りません。オウム真理教の事件以来、日本では小さな宗教団体が「何だか怪しい」と敬遠されるようになったため、最近ではさまざまな表看板が使われるようになっています。

「自己啓発カルト」「商業カルト」も

ボランティア団体やNPO団体を標榜することもあれば、自己啓発セミナーの主催団体を名乗ったり、スピリチュアルや癒し、瞑想といったキーワードを掲げることもあります。そうした活動やキーワードに引かれる人は必ず一定数いるので、そこを狙って勧誘するわけです。

カルト的集団が掲げる看板は、時代によって移り変わってきました。1970年代には左翼などの政治的カルトが、80~90年代には宗教的カルトが盛んでしたが、今は自分を高めたいという気持ちを利用した「自己啓発カルト」や、夢の実現資金の調達や経済的不安につけ込んでマルチ商法や投資を勧める「商業カルト」も増えてきました。

つまり、カルトと一口に言っても、彼らが掲げる看板には、政治、宗教や癒し、自己啓発、ビジネスなどがあるのです。いずれもそれ自体は違法というわけではないものばかりなので、カルトだと気づかないまま勧誘に乗ってしまう若者も少なくありません。しかし、いったん入ってしまうと脱退は難しく、結果的に将来を奪われることになります。カルトは若者の人生を壊す集団であり、大きな社会問題なのです。