アクセントの真似もリスクが高い

メジャーリーグのタイガースなどで活躍した元名投手のジャック・モリス(Jack Morris)が2021年、タイガース対エンゼルスのテレビ解説で大谷翔平へ差別的な発言をしたとしてテレビ局から無期限の出演停止処分を受けました。

大谷の打席での対策を問われた際に“very, very careful”と言った言葉が、日本人を真似たアクセントで差別的だと受け取られたのです。

このように外国人のアクセントの真似をすることは、コメディアンなどが昔からやってきて、普通に笑いを取ってきたものですが、現代においては非常に微妙でリスクの伴う行為になってきています。悪気もなく、つい言ってしまったとしてもその代償は大きいのです。

魅力的な若い女性に話しているハンサムな男
写真=iStock.com/SIphotography
※写真はイメージです

「ガイジン」は禁句

「外人」は差別用語だそうで、放送などでは「外国人」を使います。これは、中南米で白人の外国人に対して侮蔑的に使うgringoなどとは、まったく意味合いが違うと思うのですが、「ガイジン」には身内とよそ者を区別する無意識の心理が働いていて、ダイバーシティの世の中にはそぐわない、と指摘する向きもあります。

世界初の24時間放送のニュース専門チャンネルCNNを1980年に創業したテッド・ターナー(Ted Turner)氏は、当初foreignを放送禁止用語とし、使った場合には50ドルの罰金を徴収すると宣言したそうです。

foreignという語にはus vs. them(自分たち対よそ者)と、排他的に違いを強調する響きがあり、国際的なテレビ局にそぐわないと考えたものです。代わりにinternationalやnon-U.S.などを使うことになったので、「外国人留学生」はforeign studentではなくinternational studentと呼ばれます。大多数の大学の入学案内などでも今では一般的にそう記載されています。

例外はforeign exchange(外国為替)、foreign minister(外務大臣)、foreign reserve(外貨準備高)など、慣用的に代替が利かないフレーズです。foreignやforeignerは、現在はCNNでは放送禁止用語ではありませんが、排他的な語感を与えると思われる場面には避けたほうがいいでしょう。

spick-and-spanは「しみひとつない」「ピカピカの」という意味の形容詞ですが、SpickはHispanicの人たちを侮辱した語でもあるので、タブー視されるようになってきました。

またSpic and Spanはプロクター・アンド・ギャンブル(Proctor & Gamble)社が1945年から発売している家具・床磨き剤の名前ですが、同社はその名前とロゴを変更すると発表しています。

フリップチャート(flip chart)は、講演などの際にめくりながら話をする時に使うツールですが、Flipがフィリピン人を侮辱する語というので、これも使われない傾向にあります。