「働く気持ちがあるか」がポイント
ただ、どこに相談したらいいかわからず、困って病院に来られるわけなので、ほかにどんな相談窓口があるかをご紹介することはあります。
まず確認するのは「本人に少しでも働く気持ちがあるかどうか」です。外で働くことに不安があったとしても、少しでもそうした気持ちがあるのであれば、「就労支援」につなぎます。一方、働く気持ちがないようであれば、「ひきこもり支援」に案内します。
就労支援の窓口には、ハローワーク(公共職業安定所)、地域若者サポートステーション(通称「サポステ」)、ジョブカフェ(若年者のためのワンストップサービスセンター)などがあります。
ハローワークは厚生労働省の機関で、職業紹介などを行っています。ただ、ひきこもりなどで就労に困難を抱える人の支援に特化しているわけではないので、サポステやジョブカフェと組み合わせて活用する方がよい場合が多いでしょう。
サポステも厚生労働省の事業で、NPOや企業が運営に関わっています。対象者は15~49歳で、働くことに悩みを抱えている人に対し、キャリアコンサルタントや臨床心理士などの専門スタッフなどがついて、セミナーや職業訓練などのサポートプログラムを作って就労支援を行います。仕事のあっせんや紹介は行っていないので、ハローワークなども活用しながら就職活動をする必要があります。
ジョブカフェは都道府県が設置しているもので、機能はサポステと似ており、ハローワークを併設しているところもあります。各都道府県に1カ所程度しかないことが多いですが、保護者向けのセミナーを実施している場合もあります。
早いタイミングで第三者の支援を
本人に働く気がない場合の窓口としては、「ひきこもり地域支援センター」と「生活困窮者自立支援制度」があります。
ひきこもり地域支援センターは、すべての都道府県、指定都市に設置されていますので、まずそこに相談にいくのがよいと思います。本人以外の家族でも相談を受けつけてくれます。担当者がヒアリングし、福祉事務所や市区町村の相談窓口、自立相談支援事業実施機関などのサポート先につないでくれます。
ただ実際は、本人が行動を起こさないとなかなか解決には向かわないため、親の方は、勉強会や親子会などに参加して当事者の親同士の横のつながりをつくり、情報交換を行うといった活動がメインになっています。
生活困窮者自立支援制度は、経済的に困窮している人や世帯に対し、自立に向けた支援を行う取り組みです。就労支援のほか、経済面での相談にものってもらえます。
ひきこもりは、人間関係のつまづきがきっかけとなっていることが多く、早めの対処が重要ですが、親や家族も、どこに相談したらいいのかわからないままに長期化してしまうケースが多いようです。重要なのは、当事者やその家族だけで解決しようとしないことです。早いタイミングで第三者に入ってもらうことを考えてほしいです。
構成=池田 純子
産業医・精神科医・健診医として活動中。産業医としては毎月30社以上を訪問し、精神科医としては外来でうつ病をはじめとする精神疾患の治療にあたっている。ブログやTwitterでも積極的に情報発信している。「プレジデントオンライン」で連載中。