夫が失業した家庭ほど離婚しやすい

夫の失業と離婚にも深い関連があります。

夫の失業は世帯にとって大きなショックです。特に日本の場合、夫が収入面の大黒柱である場合が多いため、夫の失業による所得低下は免れず、家計のゆとりはすり減っていきます。これは家庭内でのストレスを増加させ、夫婦関係にも悪影響を及ぼすと考えられます。

この結果として、夫が失業した世帯ほど、その後の離婚確率が高まる傾向にあります(※3)

図表1はこの関係をシンプルに示したものです。

【図表1】世帯主の失業率と離婚率の関係

この図は有配偶者における離婚率と世帯主の失業率の関係を見たものです。2つの値の動きは非常に似ており、世帯主の失業率が高いと離婚率も高くなっています。

この図からも離婚と失業に深い関連があることがわかります。

(※3)佐藤一磨(2014)「夫の失業が離婚に及ぼす影響」『経済分析』第188号, pp. 119~141、橘木俊詔・木村匡子(2008)『家族の経済学 お金と絆のせめぎあい』NTT出版株式会社、およびCharles, K.K., Stephens, M. (2004). Job Displacement, Disability, and Divorce. Journal of Labour Economics, 22 (2), 489-522.

離職に伴い段ボールに入れた荷物を抱え、項垂れながら歩く男性
写真=iStock.com/YinYang
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夫婦間の幸福度格差も離婚の原因となる

経済状況、学歴、夫の失業以外では、「夫婦間の幸福度格差」も離婚の原因になると指摘されています。

この点はディーキン大学のカヒット・グヴェン講師らによって検証されています。

その論文の題名はズバリ、「あなたは妻よりも幸せになれない」です(※4)。ここでの「あなた」とは、夫のことを指しています。

彼らの分析によれば、夫婦間で幸福度に格差が存在すると、離婚確率が高くなることが明らかにされています。

この結果は、イギリス・ドイツ・オーストラリアの3カ国の大規模データを用いて実証されており、高い説得力を持っています。

この論文の最も重要なポイントは、夫婦の「ある一方のみ」の幸福度が低いと離婚につながることを明らかにした点です。

その一方とは、「妻」です。

妻の幸福度が夫よりも低い場合のみにおいて離婚確率が上昇するのです。妻よりも夫の幸福度が小さくても、離婚確率は上昇しませんでした。

(※4)Guven, C., Senik, C., Stichnoth, H.(2012). You can’t be happier than your wife. Happiness gaps and divorce. Journal of economic behavior and organization, 82(1), 110-130.