治療には時間がかかる

誤解その④「精神科に通えば、すぐによくなる」

精神科になじみのない人は、「病院にかかれば、すぐによくなるだろう」というイメージを持っている人が多いようです。

たとえば、メンタル不調で会社を休み、精神科に通院している部下が、カフェで読書をしているのを上司が目撃。「なぜカフェには行けるのに会社に来れないのか。精神科にかかっているんだから、病気はもうよくなっているんじゃないか」と誤解するといったケースはよく耳にします。

精神疾患の治療は、一般的にとても時間がかかります。病院にかかったからといって、すぐによくなるというものではありません。日常生活は送ることができ、カフェで読書をしたり、友だちと遊びに行ったりといったことはできても、以前のように仕事ができるようになるのは簡単なことではありません。遊びと仕事ではストレスのかかり具合いは全く違いますが、「遊びに行けるのに働けないのはなぜ?」と理解できない人は多いです。

精神科の診察や治療については、まだあまり知られていないことが多く、それが誤解のもとになっているように思います。しかし、こうした誤解によって、精神科にかかるハードルが高くなってしまうのは残念なことです。精神科に通うことは、こわいことでも恥ずかしいことでもありません。心身の不調を感じたら、気軽に扉を叩いてほしいですね。

井上 智介(いのうえ・ともすけ)
産業医・精神科医

産業医・精神科医・健診医として活動中。産業医としては毎月30社以上を訪問し、精神科医としては外来でうつ病をはじめとする精神疾患の治療にあたっている。ブログやTwitterでも積極的に情報発信している。「プレジデントオンライン」で連載中。