現代人は「ないもの」に意識が向きがち

その20~30秒後、今度は指先にドクンドクンと脈拍を感じてきます。脈拍を感じると、今を生きている実感が得られます。つまり自分の中にあるものを感じることで、自分の生活や身の回りにあるものを感じることができる“あるものセンサー”が働くのです。

現代を生きる私たちは、つい“ないものセンサー”が働きがちです。特に仕事上では足りないものを埋める癖がつきすぎて、ないものに意識が向いてしまいますが、手を合わせるだけで、あるものに意識を向けることができるのです。

脈拍がドクンドクンと鳴っていることに気づいて、一呼吸、二呼吸したら、終了です。私は坐禅や瞑想の前に手を合わせていますが、ビジネスパーソンの方々は仕事上で不安やプレッシャーを感じたときや、人間関係でイライラしたときに、ぜひやってみてください。感謝の心を思い出すいちばん確実な方法です。

この習慣を身に付ければ、退屈や虚しさは自然と消えていくはずです。

伊藤 東凌(いとう・とうりょう)
両足院 副住職

京都「両足院」副住職。両足院で生まれ育ち、3年間の修行を経て僧侶に。アメリカFacebook本社での禅セミナーの開催やフランス、ドイツ、デンマークでの禅指導など、インターナショナルな活動も。7月には禅を暮らしに取り入れるアプリ「InTrip」をリリース。著書に『月曜瞑想』(アスコム)がある。