ほとんどの国がデフォルトを経験ずみ

アメリカのデフォルト騒動が、ただの茶番劇・年中行事なのはわかりました。では実際、過去にデフォルトに陥った国はあるのでしょうか。

あります。というより、ほぼすべての国がデフォルトを経験しています。『国家は破綻する―金融危機の800年』(カーメン・M・ラインハート/ケネス・S・ロゴフ)という本によると、この地球上で過去に財政破綻を起こしていない国は、なんとアフリカのモーリシャスだけなのだそうです。ということは、それ以外の国は、過去に大なり小なり何らかのデフォルトを経験しているのです。ただその多くは“対内的”な債務不履行、つまり「ちょっと恥ずかしいローカルニュース」程度の扱いのため、伝わってこないだけのようです。

しかし、それが“対外的”な債務不履行になると、さすがに他国にも伝わりますし、しかも調べてみると、その回数は、私の想像以上でした。

たとえばスペインは過去14回(うち13回は20世紀より前)もデフォルトしている「デフォルト界のレジェンド」ですし、現在進行形の「生きた伝説」ならアルゼンチンの9回(すべて20世紀以降)が挙げられます。

世界の旗
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そのほか、19~20世紀初頭という「戦争+大恐慌」の時期には、ヨーロッパをはじめとする多くの国でデフォルトが起きていますし、第一次世界大戦直後のドイツは、ハイパーインフレと天文学的な賠償金(GDPの20年分を請求されました)でデフォルト、第二次世界大戦後の日本だって、事実上のデフォルト状態です。

また1980年代の中南米累積債務危機時にはラテンアメリカ16カ国、1990年代末のアジア通貨危機時にはタイ、インドネシア、韓国、同時期のロシア通貨危機ではロシアもデフォルトしています。さらに21世紀に入ってからも、記憶に残るものだけでも2015年ギリシャ通貨危機時のギリシャ、2001年・2014年・2020年のアルゼンチン(さすがです)などがデフォルトしています。

これらを見る限り、結局デフォルトは、私たちが思っているほど珍しい現象ではなく、デフォルトがあったからといって国が亡ぶわけでもないということです。でも、それを耳にすることが少ないのは、主要国のデフォルトが少なく、ニュース性が低いからでしょうね。

蔭山 克秀(かげやま・かつひで)
代々木ゼミナール公民科講師

「現代社会」「政治・経済」「倫理」を指導。3科目のすべての授業が「代ゼミサテライン(衛星放送授業)」として全国に配信。日常生活にまで落とし込んだ解説のおもしろさで人気。『経済学の名著50冊が1冊でざっと学べる』(KADOKAWA)など著書多数。