自分探しをしてもやりたいことは見つからない

川の流れに乗るためには「自分の心に素直になって行動すること」「自分が興味を持てる分野、人から求められる分野で突っ走ってみること」です。

でも自分の心に素直になることは、なかなか勇気が出ないかもしれません。どうしても周囲の目を意識してしまうからです。でもそういうしがらみから抜け出すのが第一歩です。

「自分は何をしたいのかよくわからない」という人が、インドへ旅に出たという話を聞くことがあります。あるいは新卒で入社したばかりだけど違和感を覚え、現状を打破するために会社を辞めて海外留学をする人もいます。

しかし、こうしたいわゆる「自分探し」をしたとしても、自分の適性ややりたいことが見つかることはほとんどありません。なぜなら、自分というものは探すものではなく、日々の生活や経験を経て、作り上げていくものだからです。

モダンな街を見下ろす女性
写真=iStock.com/AerialPerspective Works
※写真はイメージです

確かに、人には持って生まれた特性や資質といったものがあるとは思いますが、それは自分の性格や能力を構成する一要素に過ぎません。物の見方や考え方などは、あとからいくらでも上書きできますし、上書きするのが成長でもあります。

そうやって自分は自分の手で形成していくものですから、いまそこにあるものではない。だから探しても見つからないのです。

何をやりたいかが自分の外に転がっているわけではないので、ボランティアやバックパッカーをしても見つかることはありません。

そういう自分探しをしている人は、他人にアピールできる「ウリ」になるものがどこかにあり、そこに行けば見つかるかもしれないという根拠のない期待感を持っているのでしょう。

しかしそれは結局のところ、見栄や世間体を気にしているということです。他人にどう映るかという他人の価値観の中で、見栄えがしそうなものがないか、自己アピールになりそうなものがないか、探そうともがいているだけなのです。

やる人はどんな環境でもやる

あるいは、「環境を変えれば、その環境が自分に何かを与えてくれる」という下心があるのかもしれません。

インドに行けば、大企業に入れば、スタートアップベンチャーに行けば、その環境が自分に何か気づきを与えてくれるのではないか、メリットをもたらしてくれるのではないか、チャンスを与えてくれるのではないか……。

これも幻想で、やる人はどんな環境でもやるし、それなりに幸福を感じられる。しかし環境に依存している人は、環境によってモチベーションが左右されやすく、環境のせいにして不満を言うようになります。