倒産した中小企業の従業員たちの行先
原材料費が上がったのに売価は上げられないため赤字に陥る。赤字に陥れば賞与が出せなくなるため従業員が辞める。仕方なく外国人労働者を雇用するのですが、外国人労働者を雇用するコストメリットはなくなりつつあります。
最低賃金は引き上げられ、寮などを準備する雇用関連費がかかり、雇用してみると逆に人件費が上がったという事業者も増えてきました。先ほどあげた日配品事業者の倒産ですが、業界では全国上位、従業員は100人弱いて年商は数十億円、創業50年を超える老舗です。
それが2期連続で巨額の赤字を出して債務超過に陥り、自己破産に追い込まれたのです。このような中小企業は周りで増えています。
私は、倒産した中小企業の従業員の再就職先探しにも協力していますが、55歳を超えると受け入れてくれる企業はずっと少なくなります。高年齢者と女性のパート社員は本当に厳しい。
大企業では希望退職を募って大手人材派遣会社に再就職先の斡旋を委託しています。大手人材派遣会社は「再就職は9割決まります」と喧伝し、退職者一人当たり50万~60万円もらって再就職先を斡旋しています。私は大企業の退職者の再就職先も見てきましたが、行き先は誰も行きたくないようなところで、年収はだいたい半額、多くが年収300万円台まで減ります。
消費増税と中国の成長も関係している
平均年収の推移を見ていると、消費増税の影響が大きかったことは明らかです。消費税は1989年4月に創設されましたが、バブル期だったにもかかわらずこの年の平均年収は前年に比べて4万円下がりました。次に1997年4月に3%から5%に引き上げられましたが、金融危機など他にも影響があったとはいえ、この年が平均年収のピークとなり、以降は減少していきます。2014年4月に5%から8%へ引き上げられた時はアベノミクス以降の平均年収の伸びが鈍化しましたし、2019年10月に8%から10%に引き上げられた時は、上昇していた平均年収が一転して減少しました。
消費増税の影響は多くの識者が指摘していることですが、私は他に、中国との貿易量増加が大きく影響していると思います。