SNSやネットは、自己肯定感を下げる

SNSやネットの利用が、学業成績以外の、メンタルにどのような影響を起こすのか、とても気になるところです。

海外メディアでも大々的に取り上げられた研究成果があります。それは、SNSの利用頻度が高い子どもほど、自己肯定感が低く、孤独感を抱えている、といった内容です。日本の研究からも、インターネット依存が強い人では、自尊心が低く、不安・抑うつ傾向が高いことや、共感性や情動制御能力が低いことが示されています。

近年よく耳にする、well-beingとインターネットの利用状況についても、2020年にNatureに発表された論文や米国科学アカデミー紀要に発表された研究があります。ここでは、10代の子ども達にとって、SNSなどの利用状況は、well-beingや人生や生活の満足度にはほとんど影響しないということが示されています。おそらく、SNSの利用と一言に言ってもどのように利用していたか、という個人差の効果が大きく、全体としてwell-beingへの影響が見られなかったのでしょう。何れにしても、インターネットの利用によるメンタルへの影響については、まだ統一的な研究成果は得られていません。それほど研究領域としては複雑なうえ、新しい分野と言えます。

子どものインターネット利用が脳に及ぼす影響

脳発達とインターネット利用頻度の関係を調べるために224人の子の脳を3年間にわたって追った研究成果があります。この研究からは、インターネット習慣がない、あるいは少ない子どもたちは、3年間で脳全体の灰白質体積が増加しているのに対して、ほぼ毎日インターネットを使用する子どもたちの全脳の灰白質の増加はゼロでした。

大脳灰白質とは、脳の中で神経細胞が集まっているところです。近年、脳はネットワークとして捉えられ、脳の離れた領域を結ぶ神経線維連結も重要であることが多くの研究から示されていますが、この研究では、この神経線維連結も、ほぼ毎日インターネットを利用する子どもでは、発達が止まっていることが示されました。

新しいテクノロジーは、メリットもデメリットも合わせもちます。メリットを得るかデメリットを被るかは、使う人次第なのです。子どもの世話や教育を、デジタル環境に補助してもらいつつも、完全に頼り切らないことが重要なのです。

<参考文献>
・Preschool children's learning with technology at home.Plowman, L., Stevenson, O., Stephen, C., and McPake, J. UK, Computers Education, 59: 30-37、2012
・Alabdulaziz MS. COVID-19 and the use of digital technology in mathematics education. Educ Inf Technol (Dordr). 2021
・Escobar Fandiño FG, Silva Velandia AJ. How an online tutor motivates E-learning English. Heliyon. 2020 Aug 6;6(8):e04630. doi: 10.1016/j.heliyon.2020.
・Wen LiAnthony, YuhongZhu, LiaNowera “The Relationship of Interactive Technology Use for Entertainment and School Performance and Engagement: Evidence from a Longitudinal Study in a Nationally Representative Sample of Middle School Students in China” Computers in Human Behavior 122(7):106846, 2021
・Liu D. et al. Social networking online and personality of self-worth: A meta-analysis Journal of Research in Personality, 64:79-89., 2016
・Impact of frequency of internet use on development of brain structures and verbal intelligence: Longitudinal analyses. Takeuchi et al., Human Brain Mapping 2018
細田 千尋(ほそだ・ちひろ)
東北大学 大学院情報科学研究科人間社会情報科学専攻 及び 加齢医学研究所脳科学部門認知行動脳科学研究分野 准教授

東京医科歯科大学大学院医歯学総合博士課程修了。博士(医学)。JSTさきがけ研究員、東京大学大学院総合文化研究科特任研究員などを経て現職。内閣府ムーンショット型研究目標9プロジェクトマネージャー、ウェルビーイング学会理事、Editorial bord member of Frontiers in Computational Neuroscience、仙台市教育局学びの連携推進室学習意欲の科学的研究に関するプロジェクト委員会委員、日本ヒト脳マッピング学会広報委員、国立大学宮城教育大附属小学校運営指導委員などを務める。