11月19日は「国際男性デー」。男性学の第一人者、大正大学准教授の田中俊之さんは「職場では出世を目指すのが当然とされ、家庭では大黒柱であることを求められる。つらくてもそれを言い出しにくい。この男性問題を解消できなければ、男女平等を目指す上で求められる理想的な男性は増えない」と指摘します──。
不安定な足元で男女平等の概念
写真=iStock.com/LightFieldStudios
※写真はイメージです

女性が自立する時代に、男性はどうあるべきなのか

日本では従来、男の子は競争を勝ち抜いて上の地位を目指すのがよい、女の子は皆と協調して上手に人の世話をできるのがよいとされてきました。そして、そこから生まれた不平等を今もなお引きずったままでいます。

男女平等の達成はまだまだ道半ばですが、最近はこの問題に関する議論は活発で、企業では女性も男性も平等に働けるようにしよう、女性活躍を進めようという取り組みも進められています。

その成果もあり、女性も「わきまえずに」自分を出していいのだ、一歩下がって男性についていくのではなく自ら踏み出していいのだと、広く認識されるようになってきました。

ディズニー映画が描くプリンセス像も、自立した強い女性に変わってきています。昔は、貧しい女の子が王子様と結婚して幸せに暮らすといった物語が定番でした。しかし、今は『アナと雪の女王』のアナのように、男性に頼ることなく自分の力で前へ進むプリンセスが登場しています。僕はこの映画を見て「女性もありのままに生きていいのだ」という明白なメッセージを感じました。

こうした自立したプリンセス像に対して、プリンス像はどうあるべきなのでしょうか。男女平等な社会を実現するために、男性はどう変わり何をしていけばいいのか。実は、これはとても難しい問題です。

男性問題を語るのは非常に難しい

男女平等問題について語るとき、その内容は「女性が直面している課題」であることがほとんどです。職場や家庭における地位の格差、性別役割分業、アンコンシャスバイアス、女性へのエンパワーメントなどテーマも豊富で、それぞれの解決策も積極的に議論されています。

なのに、これが「男性が直面している課題」となると途端に話は難しくなり、語ろうとする人もほとんどいなくなります。僕は男性学を20年以上研究していますが、それでもやはり、男女平等という文脈で男性問題を語るのは非常に難しいと感じています。