出店ブースに大行列
ちなみに、現在市販されているペンでは「直液式」と「中綿式」が人気ですが、後者は内蔵された中綿がインクを含んでいて、ペン先を紙などの面に当てることで筆記できるタイプ。
まさにこの構造が、「からっぽペン」の開発を可能にしました。ユーザーみずからが中綿に好きなインクの色を吸わせれば、原理的にはオリジナルのペンを作ることができるわけです。
そして2019年12月、先の「文具女子博2019」を迎えます。開催4日間で約4万人を集客したビッグイベントで、呉竹の出品ブースに訪れた女性たちが「こんな面白いペンがあるよ」などと、「#インク沼」や「#文具女子」とのハッシュタグ付きで呟くと、2日目からはブースの前に大行列ができました。
「インクが使いきれない」と悩む“インク沼”の住人たち
「彼女たちに話を聞くと、既にインク自体を結構な数持っていて『使いきれない』と悩んでいるケースが多いことが分かりました。一方で、買い物風景を見ると、地域限定のオシャレなパッケージのインクや、特殊な名称のインクなどを、どんどん買い物カゴに入れていく。まさに“インク沼”な様子が、明らかになったのです」(佐藤さん)
こうしたニーズの把握によって、「イケる」と確信した呉竹は、その後、中綿(綿芯)の芯の素材や形を改良したり、栓の役目を果たす尾栓の形を工夫したりすることで、より手作りしやすい「からっぽペン」の実現に注力。
その結果、20年3月の正式発売へとつながったのです。