「反日」を合言葉に民意を扇動した文大統領

2017年に就任した韓国の第19代大統領、文在寅氏のポピュリズムの核心は「反日」です。つまり彼は「日本との分断」という激しい反日政策で、大衆の反日感情と愛国心を煽り、政権への求心力をものにしようとしたのです。

独島紛争島 韓国
写真=iStock.com/TkKurikawa
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彼が大統領に就任して以降、日韓の間には「徴用工問題」「従軍慰安婦問題」が立て続けに再燃しましたが、どちらも韓国発であり、しかも「条約ですでに解決済み」とされる案件でした。条約を遵守しない行為は非理性的ですが、この「理性よりも感情に訴える」というのも、ポピュリズムの大きな特徴なのです。どこまでが当初の目論見どおりなのかはわかりませんが、とにもかくにも彼による日韓の分断は見事に成功してしまい、日韓関係は「戦後最悪」と言われるまでに冷え込みました。

また文政権は、国民との直接的結合のために「国民請願制度」をつくりました。この制度は、国民からの何らかの請願に対し、20万人以上が同意すれば、政府が回答するという制度です。ある意味「真の民主主義」ともいえる直接民主制(全国民参加型の政治)に近い制度ですが、大きな危険もはらんでいます。それは、衆愚政治が暴走する危険です。

20万人は「軽視すると票に響く」という圧力を感じる数ですから、もし政府がその圧に負け、彼らの望む回答を出し、それを具体化する政策を行うようなことになれば、ポピュリズムが、どんどん暴走してしまいます。つまり国民請願制度は、政府を「国民感情の暴走列車」にしてしまう可能性があるのです。

しかも冷静に考えたら、そもそも20万人は多くありません。韓国の人口は約5000万人ですから、20万人はわずか0.4%にすぎません。本当に国民のための政治を行いたいのなら、0.4%よりも、残りの99.6%のための政治を行うべきなのですが……。

近年、身近に見た「ポピュリズム政治」。さて、次はどんな「ポピュリスト」が現れるのでしょうか。

蔭山 克秀(かげやま・かつひで)
代々木ゼミナール公民科講師

「現代社会」「政治・経済」「倫理」を指導。3科目のすべての授業が「代ゼミサテライン(衛星放送授業)」として全国に配信。日常生活にまで落とし込んだ解説のおもしろさで人気。『経済学の名著50冊が1冊でざっと学べる』(KADOKAWA)など著書多数。