妥協してでも早く結婚したいタイプか、じっくり理想を追究するタイプか。拓殖大学経済学部准教授の佐藤一磨さんは「結婚のタイミングに影響を与える要因として、近年『危険回避度』が注目されています。そしてそれは身近な“ある質問”で計測することが可能です」といいます――。
指輪と花
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ドラゴンボールの悟空の結婚

日本にはいくつかの国民的漫画があります。その1つが鳥山明先生の『ドラゴンボール』で、テレビアニメも人気です。主人公は異星人である孫悟空で、さまざまな強敵を倒していくというストーリーとなっています。

悟空の結婚相手となるチチとは子どもの頃に出会っており、一応結婚の約束をしていました。数年後に再会し、チチから結婚の約束をしていたと告げられた悟空は「じゃ、ケッコンすっか」と気軽な形で結婚を決めてしまいます。

悟空はあっさりと結婚を決めましたが、現実世界ではこう簡単に決めることはできません。実際はさまざまな要因を考慮したうえで、結婚するかどうかを決めると考えられます。

どのような要因が結婚のタイミングに影響を及ぼすかという点は経済学の中でも数多く分析されてきました。その結果、所得や学歴、雇用形態、そして景気状況が結婚のタイミングに影響することがわかっています。

近年の研究では、これら以外でも結婚のタイミングに影響を及ぼす興味深い要因の存在が明らかになってきています。

それは「危険回避度」です。

危険回避的な人ほど、株式投資、喫煙、飲酒を控える

「危険回避度」とはその名のとおり、「将来降りかかるかもしれないリスクをどれだけ嫌うか」を計測した指標です。

この危険回避度は、経済学の中で投資行動を説明する際によく出てきます。リスクに対する許容度が大きく、将来の変化を受け入れやすい人ほど、株等の変動資産に投資を行いやすくなります。これに対して、リスクに対する許容度が小さく、変化よりも安定を好む人ほど、株式投資よりも貯金を選択しやすくなるわけです。

これ以外にも、危険回避度は飲酒や喫煙にも関連することがわかっています。リスクに対する許容度が大きい人ほど、飲酒や喫煙を行いやすい傾向があります。これに対して、リスクに対する許容度が小さい人ほど、飲酒や喫煙を控えやすくなるのです(※1)

この危険回避度は、お金に関する仮想的な質問や実験によって計測される場合が多いのですが、「日常生活の行動に関する簡単な質問」でも計測されます。

[1]Barsky, R. B., F. T. Juster, M. S. Kimball, and M. D. Shapiro.“Preference Parameters and Behavioral Heterogeneity: An Experimental Approach in the Health and Retirement Study.”Quarterly Journal of Economics, 1997, 112, pp. 537-579.及び上村一樹・野田知彦「喫煙習慣のパネル分析 合理的依存症モデルの検証」瀬古美喜・照山博司・山本勲・樋口美雄・慶應-京大連携グローバルCOE編著『日本の家計行動のダイナミズムⅦ 経済危機後の家計行動』慶應義塾出版会, 2011, pp.91-110.