降水確率が何%なら傘を持って出かけるか

その質問とは「傘をもって出かける降水確率」です。より具体的には「あなたが普段お出かけになるとき、降水確率が何%以上ならば傘を持ってでかけますか」という質問の回答で計測されます(※2)

この質問の回答が大きいほど、つまり、降水確率が高い場合に傘を持っていく人ほど、リスクに対する許容度が大きいと考えられます。逆に質問の回答が小さく、降水確率が低くても傘を持っていく人ほど、リスクに対する許容度が小さいと考えられるわけです。

実はこの質問は大阪大学や慶應義塾大学の経済に関する調査で使用されているものであり、学術研究にも使用されています(※3)

「降水確率がどれぐらいだったら傘を持っていこうか」という場面は日常生活でよく遭遇するものです。その普段の行動から各個人の危険回避度を直感的に計測していこうというわけです。

[2]この質問の文章は、慶應義塾大学パネルデータ設計・解析センターの『日本家計パネル調査(JHPS/KHPS)』の2009年調査から引用しています。
[3]大阪大学では『くらしの好みと満足度についてアンケート』で、慶應義塾大学では『日本家計パネル調査(JHPS/KHPS)』で降水確率と傘の質問が使用されています。

傘
写真=iStock.com/Galina Chetvertina
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リスク許容度が小さい人ほど、結婚のタイミングが早くなる

さて、降水確率と傘の関係から計測される危険回避度ですが、結婚のタイミングと密接に関連することがわかっています。

結論を先に言えば、「リスクに対する許容度が小さい人ほど、結婚のタイミングが早くなる」傾向にあるのです。

そのインパクトの大きさについて、図表1のシミュレーション結果から見ていくと、学校を卒業した10年後の婚姻率は、危険回避度が中程度の女性(=降水確率が50%だと傘を持っていく)の方が非常に危険回避度が小さい女性(=降水確率が100%だと傘を持っていく)よりも約5%高いことがわかりました。

また、同じく学校を卒業した10年後の婚姻率は、非常に危険回避度が大きい女性(=降水確率が0%でも傘を持っていく)の方が非常に危険回避度が小さい女性(=降水確率が100%だと傘を持っていく)よりも約10%高いことがわかりました。

さらに、学卒後30年たった時点でも、この危険回避度による婚姻率の差は残り続けます。結婚のタイミングの違いが最終的な婚姻率の差にもつながっているわけです。

【図表1】危険回避度によって変化する結婚のタイミング

これらの結果から明らかなとおり、危険回避度によって結婚行動に違いが生じています。

さて、ここで疑問となるのは、その理由です。なぜリスクに対する許容度が小さい人ほど、早く結婚していくのでしょうか。

この点について、これまでの研究は2つの理由を指摘しています。