ある程度妥協しても早めに結婚を決めたい

1つ目の理由は、リスクに対する許容度が低い人ほど、結婚相手とのマッチングをある程度妥協してでも早めに結婚を決める可能性があるためです。

現代社会において結婚は、各個人の自由意思によって決定され、基本的には自分で結婚相手を探すことになります。このため、探そうと思えば自分とベストマッチングな相手を見つけることができるかもしれません。しかし、それには時間がかかるでしょうし、お金もかかるかもしれません。また、時間とお金をかけたとしても、良い相手に巡り合えない恐れもあります。

これらの点を総合的に考えると、危険回避的な人ほど、時間とお金をかけてベストマッチングな相手を探し出すのはあまり好まないと予想されます。むしろ、マッチングをある程度妥協してでも、手堅く早めに相手を探し出すのを好む可能性が高いと考えられるわけです。

実は同じような傾向が職探しでも見られることがわかっています。危険回避度と職探しの関係を分析した研究によれば、リスクに対する許容度が小さく、変化よりも安定を好む人ほど、早めに仕事を決める傾向が強いのです(※4)

結婚の「保険機能」重視派

2つ目の理由は、リスクに対する許容度が小さい人ほど、結婚の保険機能を重視する可能性があるためです。

結婚にはさまざまなメリットがあります。その中の1つに、結婚して配偶者と生活することで予想外に発生する病気や失業といったショックに対処できるリソース(お金や人的ネットワーク)が増えるという点があります。これが結婚の保険機能と言われるもので、「結婚すると安心する」という感覚の背景にあるものだと考えられます。危険回避的な人ほどこの機能を重視し、早めに結婚を決めるというわけです。

以上の2つの理由から、リスクに対する許容度が小さい人ほど、結婚のタイミングが早くなると考えられます。

「今日は雨が降りそうだから傘を持って行こう」という行動は日常生活のささいな一場面にすぎません。

ただ、この行動は個々人で少しずつ違っています。そして、この行動の違いの背景には各個人の危険回避度が影響しており、結婚という他の行動でも違いを生む原因となっているわけです。

[4]Lippman, S. A., and J. J. McCall. “The Economics of Job Search: A Survey.” Economic Inquiry, 1976, 14, pp. 155-189.及びPissarides, C. A. “Risk, Job Search, and Income Distribution.” Journal of Political Economy, 1974, 82, pp. 1255-1267.

佐藤 一磨(さとう・かずま)
拓殖大学政経学部准教授

1982年生まれ。慶応義塾大学商学部、同大学院商学研究科博士課程単位取得退学。博士(商学)。専門は労働経済学・家族の経済学。近年の主な研究成果として、(1)Relationship between marital status and body mass index in Japan. Rev Econ Household (2020). (2)Unhappy and Happy Obesity: A Comparative Study on the United States and China. J Happiness Stud 22, 1259–1285 (2021)、(3)Does marriage improve subjective health in Japan?. JER 71, 247–286 (2020)がある。