これまでの「当たり前」は通用しない

もし、社員と話したいと頼んでも断られたり、その場に人事担当者が同席したがったりするようなら、ちょっと問題のある会社だと考えていいでしょう。社員の自由な発言を止めたい「何か」があるわけですから、たとえすでに内定をもらっていても再検討する必要があると思います。

もちろん、事前に社員と話せば完全にギャップがなくなるというわけではありません。よその会社であるからには違いがあって当たり前。重要なのは、その違いを事前にどこまで把握しておけるかです。

可能な限り実態をつかんでおけば、入社後に「違った」ということも起こりにくくなりますから、ギャップに悩む可能性をあらかじめ減らしておくことができます。これは、「入ってみたら仕事の進め方になじめなかった」というリスクを回避する上でも有効でしょう。

最近は、転職にあたってリモートワークの有無を重視する人も増えてきました。この点も、フルリモートが可能なのか、それとも週や月あたりの回数が決まっているのか、職場に言い出しにくい雰囲気はないか、きちんと社員に確認したほうがいいように思います。

条件に「リモートワークOK」と書いてあっても、自分の裁量で自由にリモートワークが選択できるとは限りません。今いる会社がそうだからといって、同じように自由に選択できると思い込むのは禁物。中には、リモートワークを選ぶと昇進に響く会社もあると言われています。

会社で教え込まれてきた「当たり前」は他社や世間一般とは違うもの。会社が違えば雰囲気や仕事の進め方も違って当然。長く一つの社で働いてきて初めて転職する方は、この2点をしっかり念頭に置いて転職活動をし、そして転職先での仕事に前向きに臨んでほしいと思います。

構成=辻村 洋子

黒田 真行(くろだ・まさゆき)
転職コンサルタント、ルーセントドアーズ代表取締役

1988年、リクルート入社。2006~13年まで転職サイト「リクナビNEXT」編集長。2014年ルーセントドアーズを設立、成長企業のための「社長の右腕」次世代リーダー採用支援サービスを開始。35歳からの転職支援サービス「Career Release 40」、ミドル・シニア世代のためのキャリア相談特化型サービス「CanWill」を運営している。著書に『転職に向いている人 転職してはいけない人』『35歳からの後悔しない転職ノート』『採用100年史から読む 人材業界の未来シナリオ』など。