支店はチームであり、心をひとつにして大家族であろうとする長野東支店のメッセージ。茅野支店時代から宮田が目指している組織の姿である。
撮影=大井川茂兵衛
支店はチームであり、心をひとつにして大家族であろうとする長野東支店のメッセージ。茅野支店時代から宮田が目指している組織の姿である。

部門間の「心の壁」をいかになくすか

先に触れた「なでしこユニット」の女性職員の躍動ぶりと同様に、融資部門の職員たちも「自走する営業マン」へと変貌しました。ほかにも、各部門が主体的に働くようになったことが、2年目になって「営業店業績」の数字に如実に表れました。

「営業店業績」には融資、預金、財形貯蓄、お客様満足度などの評価項目があり、支店という営業拠点の成果を計る一つの尺度といっていいでしょう。この「営業店業績」がそれまでは中位クラスで推移していたのが、一気にグーンと伸びて、支店トップとなったのです。その後も茅野支店はトップを維持していくことになります。

こうして大躍進できたこと、新米支店長である私には大いに励みになりました。「職員が主体的に働くようになるやり方は間違っていない」と。

しかし、その一方で、支店改革はまだ道半ばだ、と認識していました。担当の業務は職員が主体的にやるようになり、成果は上げている。しかし、他の人が困っているときのサポート、フルに業務ができない人を思いやる気持ちとなると、どうだろうか。そして、部門や業務上の利害が絡んだときに、それを自ら調整し、助け合う関係が築けているだろうか。

困ったときに互いに助け合いながら、数値目標をきちんと達成する組織風土をつくりたい。時間がかかるのを覚悟しながら、改革を続けていきました。

私の支店長4年目、2019年度の期末に近づいてきたときのことです。

ある営業項目が数値目標に全然及ばない水準のままになっていて、担当責任者はギブアップ状態。「さて、どうするのかな」と遠目に成り行きを見守っていました。

茅野支店では「預金」「融資」「営業推進(外回り)」の3セクションに分かれていて、各責任者が、予算作成と予算管理を統括していて、最終的な支店全体の予算は、彼らが話し合って調整をします。ここの数字はそちらがもっと積んでください、わたしのほうはこの数字を頑張りますから、というような突っ込んだやりとりをします。

ただでさえ、期末が近づいてくると、数値目標達成に向けて全開モードで仕事をしているはず。担当外の業務をやる余裕などないはずです。その彼らが、未達になっている営業項目を前に、会議でこう切り出したのです。

「これは非常事態。未達の項目をみんなで分担してやろう」。支店として目標数値を達成するために、全員で取り組もう、というのです。窓口担当の新人までも「私もやります」と名乗りを上げました。先輩の指導を受けて複数の契約を取りつけたのです。

こうして支店全員で、目標数値を達成したのです。

あれはまさにミラクルでした。数字の隔たりが大きいので、私は内心、無理かなと思っていましたから。別の言い方をすれば、助け合う意識、強い連帯意識が職員に根付いていたことを、私は思い知らされたのです。まさに職員が一丸となった「チーム茅野」の姿といっていいでしょう。

職員の意識が大きく変化したことは、長野ろうきんで行っている「ストレスチェック組織評価」からもみてとれました。たとえば、2016年の評価では、「職場の雰囲気が友好的でない」と答えた人がいましたが、2年目以降はゼロです。一方、「仕事のコントロール」「上司や同僚の支援」など項目は、年々評価が上がり続けています。

このことは、長野ろうきん内での評価に表れました。支店長4年目に「総合評価」でトップの「総合最優秀店」になることができたのです。

前に「営業店業績」の評価では、茅野支店が2017年から連続して支店トップになっていることを話しました。ただ、人材育成や働き方改革などの指標も反映した「総合評価」でみると、茅野支店は2017年、18年ともに2位の「総合優秀店」だったのです。その時点では、支店として目指す姿にまだ近づけていない、と私も認識していただけに、「総合最優秀店」になれたことは最高に嬉しかった。そして、それ以上に、主体的に働くようになった職員一人ひとりを褒めてあげたい。