若者の投票離れの理由とは?
【原田】この秋には衆院議員選挙が控えています。でも、選挙には関心が持てないという若者も多いです。「衆院選への投票はしない」と考えている人がいたら、その理由を聞かせてもらえますか?
【橋本】純粋に若者人口が少ないから、日本は「シルバー民主主義」。若者に寄り添う公約を掲げる人はいないし、行っても無駄だと思っています。
【阪口】選挙に行くなら、候補者について調べて、きちんと投票先を選びたい。ただ、正直言って選挙に関する優先順位は低いから、情報を集める時間を作れる気がしないです。
【鈴木】家ではテレビもつけないし、政治や社会の状況を知る手段が携帯のニュースやSNSで流れてくる投稿くらい。投票するなら適当にしたくないけれど、自分で調べるほどの意欲も関心もないから、結局行かなくていいか、ということになっちゃいそう。
【落合】僕も興味がない、というのがいちばんの理由です。さらに言うと、投票に行く意味が見出せない。投票前から各候補者の支持率、当確予想がされていて、だいたいその通りの結果になりますよね。僕が一票を投じたところで結果が変わらないなら、わざわざ時間を割いて投票所に行く意味はないかな、と思ってしまいます。
「必ず投票する派」の理由
【原田】反対に「必ず投票する」という人たちの意見は?
【加藤】投票率が低いことが常態化していて、大人と話した時にも「どうせ若い世代は選挙にも行かないでしょ」と決めつけられがち。それが嫌なので、行きます。なめられないように(笑)。
【原田】「なにくそ!」って思うんだ。加藤くんみたいなタイプには、「どうせ選挙行かないんでしょ」とか、どんどん言ったほうがいいわけですね(笑)。これからはそうしよう。
【坂本】SNSが浸透して、候補者のツイートが見られたりと、情報を得やすくなっているとは思います。立候補者の主張についてわかりやすくまとめてくれる投稿もあるし。普段、政治に関心がなくても投票はできるようになってきている。
【高橋】僕は投票離れへのアンチテーゼというか、「投票しなくて当たり前」という若者世代の風潮はちょっとよくないと思っていて。たとえ白票だったとしても、投票には必ず行きます。
【森】僕が投票に行く理由は、親の教えです。「知らなくてもわからなくてもいいから、とりあえず投票は行け」と教育されてきたので。
【山田】私の周囲の子たちには、選挙に行かないのはクールじゃない、という雰囲気があります。行くのがあたり前だし、投票しないほうがむしろダサい。
【原田】一口に若者といっても、政治に興味がない人ばかりじゃなくて、関心を持って投票行動をする人もいるし、「若者は選挙に行かない」という決めつけに反発を覚えて行動をしている人もいる、と。ただ、これまでの話でも、若者向けの政策はきちんとキャッチしている人が多い印象でした。政治家が若者に目をむければ、投票行動も変わるかもしれませんね。
構成=浦上藍子
1977年東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダーを経て、現在はマーケティングアナリスト。2022年より芝浦工業大学教授に就任。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。主な著作に『ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体』(幻冬舎新書)、『パリピ経済 パーティーピープルが経済を動かす』(新潮新書)、『Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?』(光文社新書)、『寡欲都市TOKYO』(角川新書)、『Z世代に学ぶ超バズテク図鑑』(PHP研究所)などがある。